EVENT3
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【3】11/17(火):午前 ラウンジ
(昨晩から降り続ける雪の影響により、普段はランニングに費やしている時間は否応なしにストレッチの時間に置き換えられた。自らの体力のなさを痛感する日々であるのは未だ変わらず、故に基礎体力作りに時間を割きたい身からすれば、早朝ランニングは相応に意味を有する時間であったのだけれど。雪ともなれば仕方がないかと、休校となったことについては純粋に喜ばしく思うのだから現金なものである。――しかし。浮いた時間をバスケットボールに触れる時間でなく、学生の本分に費やす時間とせねばならないことに不貞腐れる気持ちもまた仕方がないだろう。バスケに向き合う時間と同じくらい、卒業の為に勉学と向き合う時間が必要であるということは流石に理解しているけれど。)……練習メニュー考えんのも勉強の内だよなあ?(ラウンジの一角、目前のテーブルに広げられているのは幾つかの勉強道具。パラパラとノートを捲りながらぼやいた声はすぐ近くを通り掛かったか、それとも同じくテーブルに向き合う誰かに対してであったか。見事なまでの現実逃避に誰かを巻き込む心算であるくらいには、数式と向き合うことに飽きてしまったことが相手にも伝わるに違いない。)
* 10/2(Mon) 22:32 * No.134

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(雪が降る。それもまた日本に来て初めて体感したことの一つで、一晩で降り積もった真白の絨毯を窓辺から見下ろした朝の衝撃と言ったらなかった。思わずルームメイトの名を呼んで大騒ぎするだけでは飽き足らず、まだ足跡のない其処にわざと自分の足を沈めてはきゃっきゃとはしゃぎ、朝食の間も休校の連絡を受けていた間もすっかり上の空。心はそのはるか上空から降り注ぐ白に奪われたままだった。そうしてアパートから自習道具をとって来るだけの短い道中ですらまた雪に夢中になって、いつもなら引き摺ってでも乙坂を連れ行くお目付け役たちはとっくのとうに多目的ルームへ。珍しく放置が許されたのは、学業においては真面目さが認められているからだろうか。来日して間もないため文系は中々苦戦を強いられることがあるものの、教育熱心な母国のおかげでその他の教科はそれなりに上位の成績をおさめている。ゆえに物珍しさに駆け回る大型犬は早々に放置を決め込んだのだろう。)…それは、バスケの勉強ってこと?(して、流石に学習道具を放り出してまで遊びはしない程度に分別のある男は冷ややかな空気を堪能してのち、遅ればせながらロビーに辿り着いた。そしてラウンジの一角で上がった声に反応したのは、“バスケ”という単語を反射的に拾う耳が備わっているからに違いない。多目的ルームと比べると開けたラウンジに人は少なく、お互いの声が良く通る。)こんにちは、ミッチーサン。(そのまま当然のように目的地とは逆方向へ歩いていけば、彼の目の前、開いているソファに腰かけにこりと笑い、)ショーホクではバスケの授業もあるの?(と首を傾げた。合宿が始まって早2週間以上が過ぎ、かつてルームメイトに教わった「ショーホクノミツイ」が「湘北の三井」と変換できるようになったわけだが、ふざけた呼び名は声の大きな彼のチームメイトらが呼ぶ「ミッチー!」や「三井さん!」が混ざった結果。指摘されれば直るのだが、気づくとすぐこの有様だ。)
* 10/3(Tue) 01:09 * No.135

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おー。バスケの勉強。練習メニューもだし、戦術とかもな。自分達の課題について話すのだって立派な勉強だと思わねー?(寄越された問いはあっさりと拾い上げて、端的に投げた言葉に対する補足じみた言葉をつらつらと。蓋を開けば単に目の前に広げられた課題等と向き合いたくないという真実が顔を出すのだけれど、折角のバスケ合宿だというのだから、他校の相手をはじめとする普段は試合程度でしか関わりを持たないであろう相手とも、練習方法や戦術について議論を交わしたって良いのではないだろうかと。バスケに関することであれば幾らでも思考を巡らせられると自負しているものだから、相手の反応如何で更なる言葉を重ねることもあったはずで、)……あ?(その口が動きを止めたのは、彼の口から紡がれた己のあだ名。あまり付けられることのない敬称をその呼び名に付ける相手は、普段から周りには居ないような。訝し気に向けた視線が相手を捉えて、瞬いた瞳が結論付ける。)――何処の中学の奴?(この合宿に参加をしている中学生だということは、高校の選手として見覚えがないものだから早々に導き出される。とはいえコートの中でプレー中であればまだしも、コートの外に出てしまえば中学生の顔と名前とが全員一致している訳ではないものだから、早々に白旗をあげたのならば彼へと問い掛けてしまおう。彼はどうやら、こちらのことを名前程度であれ知っているらしい。)あったらいいんだけどな。多分オレ、結構良い成績だろーし。科目として作られねーかな、バスケ。実技も有りで。(流石にあり得ることのない空想は笑い混じりに続けてみせよう。向かい合うようにして座った相手の顔を見据えるようにして。)
* 10/4(Wed) 23:20 * No.141

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たしかにそれは勉強かも。(机上でバスケの理論を組み立てるというならばそれは立派な勉強と言えよう。連なる補足には素直に頷き、「せっかく色々な選手がいるものね」と意見交換の大切さには同意する一方彼のサボりたい心情には気づきもせずに。)――ああ、おれ、白鳥中の乙坂夏海です。(決して柄がいいとは言えない探るような反応にも怯むことなく、単に彼の記憶に己の名がないことに気がつけば厭うことなく自己紹介を。ついでに「ドリブルが得意な7番の。赤いヘッドバンドをつけている…って言ったら思い出してもらえる?」と図々しくも言葉を重ねて。コート上を離れた今、目印となる赤も取り去り彼の印象とは異なるのかもと思ったので。)なんだ。ないの? あるならショーホクに入学したいなって思ったのに。(やはりどこの高校も中学の延長、体育の時間にバスケがあるかないかといったところなのだろうか。彼の言葉は想定内の返答だったが、本気で期待が外れたような顔をしてみせるのは乙坂の癖みたいなものだ。喜楽と哀に関しては表情豊かでリアクションが大きい。)うん。もしあったらミッチーサンはいい成績とれると思うよ。いつも正しくてきれいなフォームだものね。(とはいえ悲壮感を引き摺るには過ぎた戯れのような話題ゆえ、笑顔で彼の空想に乗っかった。)ああでも、勉強なら座学が中心なのかな。ミッチーサンの考える、ショーホクの課題は何ですか?(目が合えば此方か逸らすことなく、対談のような形で討論の真似事を。)
* 10/5(Thu) 11:18 * No.142

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白鳥のオトサカ……あー、ユニフォーム着てりゃわかるかもしれねー。ヘッドバンドの奴、確かにいたな?(視線を宙へと彷徨わせて、思い返すは体育館で目にした中学生達の姿。複数の中学より招待された彼ら全員を名前で識別しているというよりかは、ユニフォームに記された番号とプレースタイルとで識別している節が否めないものだから。おおよその見当は付きつつもイコールで結ばれないことを申し訳なく思いつつも、「まあ見りゃわかるかも」と次の練習中には彼の姿を探すこととするつもりだ。)え、マジ?なら“ある”って言っておいた方が良かったか、入学してから実はありませんでしたってわかったところで遅いだろーし。見学行ったらバレちまうだろーけどよ。(中学生達には学校見学の機会が何度か与えられていると聞いているから、ここで己が嘘を宣ったところで直接足を向けてしまえば真実を知られてしまう可能性が無きにしも非ず。「もう湘北行ったか?」と尋ねるのは単純な興味故だけれど。)お?おお、ちゃんと知ってんだな、オレのこと。座学でも別にいいけどな、バスケ理論?みたいなやつ。オレも結構考えたりするし。たとえば、そうだな……外からの武器が足りなくなるのは課題だよな。内も桜木が本調子って訳じゃねーし、無理はさせられないから仕方ないけどよ。宮城が切り込めるっつったって、バランスっつーもんが必要だろうし。(赤木や小暮、二人の同級生に続き己もまた卒業を控える身であることに変わりはない。それまでに今後の課題と成り得るであろう部分を少しでも補えればとは思いつつも、やはり来年入部するであろう新入生達に穴を埋めてもらう必要があるとは理解しているものだから――目の前の彼がどのような選手であるのかを知りさえすれば、確りと勧誘に励むこととするかもしれない。来年度からの湘北が求める武器となる、そんな中学生を一人でも多く獲得するために。)
* 10/7(Sat) 12:37 * No.146

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あはは、うん。ここにいるみんな、そんな学校があったら入りたがるんじゃないかな。(あまりにあけすけな彼の物言いに破顔すれば、「ミッチーサンは正直だね」と嘘をつこうとした事実すら好感に。ちなみに湘北にはまだ見学に行っていないのだと答える代わりに、「リョーナンとショーヨーには行きました」「どっちもバスケの授業はなかったみたい」と冗談めかして。)もちろん。ショーホクのミッチーサンは動きがきれいだから覚えてるよ。(とはいえこうしてきちんと言葉を交わすのは初めてだ。練習時間に同じコート上で相まみえたことはあれど、自由時間はルームメイトやチームメイトと戯れることが多かったので他校の先輩と雑談をする機会はなかなか訪れなかった。ただその美しい動きに目を奪われたことなら幾度となく。ゆえに彼のバスケ理論とやらには興味があった。唐突に始めたインタビューの答えをふんふんと軽い相槌を交えて聞きながら、「サクラギ、ミヤギ」と覚えのある名を繰り返す。いずれもかつてルームメイトから聞いた名であり、憧れとともに覚え直した名でもある。)そっか。ミッチーサンは3年生だから、ショーホクはシューターが減っちゃうんだ。サクラギサンはゴール下が強い選手で、ミヤギサンはボール運びが上手い選手だし……ああ、でもルカワサンは外からも器用に打てそうだけど。(それぞれのプレースタイルと名がすんなり一致する程度には、この合宿で間近に見た彼らの動きは鮮烈だった。来年の湘北が抱える課題はわかりやすく眼前の彼の強味を失うことであり、「なるほど」と頷けば、)じゃあおれを勧誘しましょ。フリーなら絶対にシュート外さない自信があるよ。(片手をあげて、にこっと無邪気な立候補を。鍛えられた体幹と音感。正しいリズムと決められたフォームの再現は乙坂の強みである。湘北のプレースタイルは好ましいし、進学先としても興味があった。)あ、でもおれはどちらかというと中に入っていく方が得意だし、外から攻めるなら断然ツカサの方がうまいけどね。(そのくせ自らを売り込もうという気概はさほどなく、なんなら他校のお気に入りの選手を推薦する始末。大会で負けた悔しさはあれど、ライバル視イコール敵視とはならない男はあっけらかんと大して親しくもない他校生のファーストネームを紡いで笑う。)
* 10/8(Sun) 17:33 * No.148

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そういう学校があったら、そもそもオレら全員元々入学してんだろーなって思うじゃん。したら誰がレギュラーになってんだろーな?(彼と己と、同学年でないからこその軽口だ。高校最高学年の己と中学最高学年の彼と。年次こそ重なりはしないものだから、同じ土俵ですらない――だからこその仮定の話。合宿が始まってから早いもので2週間が経過した中で、彼の目に映る高校生達と、己の目に映る中学生達との違いのすり合わせにもなり得るかもしれない。)よく見てんじゃねーか。なら今度はもっと近くから見てろよ、直接1on1してもいいしよ。お前がどんなフォームなのか、オレもちゃんと見てみたいし。(合宿に参加している選手全てが入り乱れた形で行われる混合の紅白戦等、コートの内外より赤いヘッドバンドを付けた選手と対峙した記憶は確かにあるけれど。全ての動きを確りと目にしたという訳ではないものだから、これもまた良い機会とばかりに声を掛けておこう。あわよくば彼のポテンシャルを理解した上で、己の高校への勧誘に本腰を入れるという狙いも勿論あるが。)小暮も良いシューターだけど、アイツはもう引退してっからさ。せめて一人は育ててから卒業したいとは思ってるとこ。桜木と宮城よりは流川だろうな。ただあの3人は元からの役割もあるし、どうせなら他の奴がいいんだよなー……。(既に埋まっているメンバーに新たな武器を与えるというよりは、浮いた穴を補填する武器を得たいと考えるのは道理だろう。卒業する立場に在るからこそ己に残せるものを考え続ける日々だから、彼の言葉には瞳を数回瞬いた。)え、お前外からも打てんの?(尋ねる言葉は些か食い気味に。尚更彼のプレーを間近で見なければならないと思う気持ちと、)ツカサって、……江藤か!いやアイツはさ、もう湘北に入れるってオレは決めてんの。オレの同室だしな、アイツ。他に目ェ向けたりとかさせるつもりねーからよ。知り合いならお前も纏めて湘北来りゃいーんじゃね?(まるで名案とばかりに宣うのは新たに生まれた構想だ。彼ともう一人、この合宿に於いて誰より時間を共にしているという自負の有る後輩と。外からの武器を持つ二人を湘北に招き入れることが叶うというのならば、己が抜けた穴を埋めるのも容易ではないだろうかと。)
* 10/8(Sun) 20:52 * No.150

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ほんと? じゃあ約束。今日の練習からミッチーサンのこともっとよーく見ておくよ。(ウインクを添えて誓いを立ててのち、軽々しい物言いを礼儀知らずと謗られぬのをいいことに、「1on1も楽しみにしてる」「だからミッチーサンもおれのこと見ててね」と赤いヘッドバンド以外にも彼の記憶に留めてもらえることを願って。──たとえばふと話題にした件のライバル選手のように。)そっか。ツカサはミッチーサンのルームメイトなんだね。(まさかファーストネームを紡いだだけで彼が理解を示すとは思わなかったが、二人が同室の仲と知れば納得がいく。しかもその話しぶりを見るに、彼は江藤良がいかに優秀なシューティングガードかよくよく知っているらしかった。)なんだ、ずいぶんとツカサのこと気に入っているんだね。(そのうえ他に目を向けさせるつもりはないという情熱的な言葉に瞬けば、)ならショーホクに行けばおれもツカサとプレーできるのかな?(学校の校風、チームカラー、監督の手腕、現役の先輩たち――高校を決めるにあたって参考とすべき項目はいくつもあれど、ある意味一番重視すべきは長くチームメイトとして過ごす同級生の進学先だ。別段誰と一緒にプレーしたいという気持ちで学校を選ぶつもりはなかったけれど。)いい動きをするからおれも好きだよ。それにヒトガラ? もね。(強豪校の正統派エースとぽっと出の異端児。この合宿が始まってから交流らしい交流はまだ出来ていなかったが、個人的にああいうストイックな男は好ましかった。ゆえに彼の名案には「それいいかも」と笑顔で乗っかったものの、)でも、まだわからないよ。ツカサもおれもちがう学校を選ぶかも。ミッチーサンがんばらないと。(ふふ、と微笑みを象る口元はそのままに不吉な未来を口にして。流石に希望者が皆その高校に進学できるはずもなければ、彼らが希望する中学生を必ず獲得できるとも限らないので。)
* 10/8(Sun) 22:55 * No.152

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おう、約束な。ついでに盗めるモンは盗んどけよ、聞きたいことありゃ後で聞いてくれ。(己もまた彼のプレーを目にすることで、直接告げてやりたいことが生まれる可能性もあるだろうから。)そ、毎日同じ部屋で楽しく過ごしてるぜ。そーいや他の部屋の話ってそんなに聞かねーな……お前、同室誰だっけ?(湘北の面々の内、誰かと同室ではないということは流石に知っている。ただ他校の誰が彼の同室であるのかまでは認識していないものだから、尋ねる声はあっさりとしたものだ。それこそ他のチームメイトと同室の中学生に関しては、練習時に目にする機会が多いので。)アイツもシュートフォームが染み付いてるタイプだろ。そういう奴が居たら助かるしな。(気に入ってる、というよりは信用している。その言葉の方が正しく感じるのは己の内に留め置くから、肯定も否定もせずに答えだけを述べることとして。)そうなったら楽しそうだと思うけど、オレは。湘北バスケ部、お前に合ってると思うぜ?ま、考えとけよ。(ついでに話題に上った彼の意思の後押しにでもなってくれればと思うのは頼りすぎだろう。上級生達が引退をして、新たに新体制を迎える湘北バスケ部。その面々と彼とは気が合いそうに思うから、それこそ学校見学のついでにバスケ部自体の雰囲気を掴んでくれればいい。「見学に来る時には言えよな」と、案内を買って出るのはサービスの心算だ。)……つーか、これで江藤に湘北じゃないとこ選ばれたらオレの立場がなくねーか?ちゃんと約束しとかねーと……知り合いも一緒に行くってなったらアイツも頷くんじゃね?“オトサカも行くって言ってた”とかさ。(ハッと気が付いた顔をしたのは偉そうに豪語しつつもその言葉の通りに話が進まなかった場合に思い至ったが故に。彼らの繋がりがどの程度のものなのか、他校のライバル同士であるという以外に繋がりがあるかどうかを知り得ないからこそ、勧誘の材料とするのは諸刃の剣かもしれないと。尤も材料は何も一つに限るべきではないだろうから、他の手段を日々探すのは勿論のこと――手っ取り早く済むのであればそれはそれでとの甘い気持ちは、まあ捨て切れやしないのだが。)
* 10/9(Mon) 02:03 * No.154

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それはいいね。おれも毎日アキラといっしょで楽しいよ。おれよりのんびり屋さんだから気が楽だし……あ、アキラでわかる?(以前のように何処のアキラだと問いを重ねられる前に「リョーナンのセンドーアキラ」と言い換えたのは、己の気安さが他校の先輩を呼ぶに相応しくないという自覚があるため。とはいえ気まずさの欠片も浮かべずにこりと笑って。)そうだね。きっとおれの、何百倍も打ってきたんだろうと思うよ。(あくなき反復と言うは容易いが正確にしみついたフォームの美しさはこの上ない向上心の証左だろう。そんな江藤への好感を躊躇いなく言い表せる感性と語彙力の持ち主は、)うん。考えておきます。おれも好きだし。(未来のチームメイト候補を前向きに検討し、その場の勢いかリップサービスかなんて穿った見方は存在せず、乙坂に“合う”と言ってくれるのならばそうかもしれないと「じゃあ案内はミッチーサンにお願いしようかな」と来週に控えた湘北見学の約束をひとつ。)……あれ、本気で気づいてなかったの? そうだよ。ちゃんと約束しておかないと。ミッチーサンが気に入る選手ってことは、他の学校もほしいってことでしょう?(それまでルームメイトのつながりは絶対だと信じていたかのようだった彼の気づき、自信家が椅子から転げ落ちたみたいな顔が面白くって思わず笑った。そのうえ彼の必死さが好ましくてくすくすと。)でも、残念ながらおれが行くって言ってもあまり効果はないかも。おれはツカサのこと好きだけど、ツカサはどうかわからないもの。(それから形ばかり申し訳なさそうに眉を下げ、「実はあんまり話したことがないんだ」と正直に告げたものの、)だからミッチーサンからアピールしてほしいな。おれのいいとこ。(すぐに良いたくらみを思いつきましたと言わんばかりの笑顔でもって。材料がないなら作ればいいだけのこと。彼の頑張り次第で、乙坂が江藤を釣り上げるための餌となるかもしれないのだから。)それでおれたちが仲良くなったら、いいことだらけだよね。えーと、エビとタイを釣る…?(とはいえ合宿も折り返し地点を過ぎた頃、今から始めるには少し気長な作戦だったか。)
* 10/9(Mon) 20:52 * No.158

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アキラなんて奴居たか……?のんびり屋のアキラだろ?湘北じゃねーのは間違いないとして、……いや誰だ?(残念ながら彼の言う“アキラ”の姿がぱっと思い浮かぶほど、他校の選手に精通している訳もなく。早々に白旗を掲げるまでもなく寄越された答えには、「仙道ってアキラっての?」と漸くの合致となるだろう。同時に思うのは、名前を呼ぶ程にまで親しくなったのか、という少しばかりの驚嘆だ。)負けてらんねーよな。練習量もだけど、オレもシューターだしよ。ま、今んとこオレが何歩もリードしてるのはわかってっけど?(中学生相手に張り合うとは大人げない、そう突っ込みを入れる姿は今この時ばかりは何処にもないものだから。尤も同じポジションに在るからこそ、この合宿中だけであったとしても託せる部分は多々あると感じているのもまた確か。己から学んだことを湘北で活かしてくれるのが一番であるのは勿論だが、仮に他校へ進学を為したところで、コートの上で知った顔を見る機会が有ればいい。高校という場で同じコートに立つことが叶わないからこそ殊更に、目前の彼にも言えることだが。高校案内の口約束は確り交わして、「任せとけ」と鷹揚に首肯を返しておくこととしよう。)オレはてっきり、アイツは湘北に入るモンだとばかり……いや、ダメだろ。先に目ェ付けたのオレだし、そこはキッチリしておかねーとな。戻ったら言うわ、江藤に。そーいやちゃんと言ったことなかった気ィするし。(己と同室になったことで、湘北に所属する選手と関わる機会が増えただろうことからも、半ば既定路線とばかり思い込んでいたことは否めない。だからこそ、真っ直ぐな勧誘を向けることも殆どなかったことに思い至れば、帰室をした際に交わす話題は決まったも同然だ。同室の彼に対してと、)江藤にも言うけどよ、お前もだからな。エビのつもりで居るかもしれねーけど、オレからしてみりゃお前ら二人とも、ネギしょったカモみたいなモンだし。(全ては己が去った後の湘北が、再び全国の舞台に立つ礎とする為に。揃って入学したカモ達がより親しくなれば、それはそれで連携も取りやすくなるだろうからまさしく良いことだらけだろう。エビとタイよりはカモとカモ。どちらも纏めて、湘北という鍋に放り込まれてしまえばいい。)
* 10/10(Tue) 21:25 * No.160

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ミッチーサンは情熱的だね。(選ばれて当然という純粋な思い込みは傲慢さと紙一重。しかし怠惰とは結びつかないのが良いところだ。生憎彼の応援旗に記されたキャッチコピーは知らなかったが、「熱い」と称した乙坂の感性は間違ってはいないだろう。)そこまで求められるなんて、ツカサがちょっとうらやましいかも。(だからと言って同じように自分を口説こうとするルームメイトの姿は想像できなかったしそれを望むこともなかったけれど、その真っ直ぐな欲と心根を微笑ましく思ったから。勧誘の件についてはあくまで他人事のつもりだった。興味のある他校のライバル選手とお近づきになる口実。ついでに彼の勧誘の手伝いになったら一石二鳥、とそのくらいの心持ちのふんわり計画。すっかりソファに身をゆだねたリラックスモードがその証拠で、有名選手の彼に自らを売り込もうという気概もなかった。)…え? おれも?(ゆえに彼の発言には驚きを隠さず、瞬きののちに、)カモは鳥でしょう? それがネギ…?(慣れない諺など使うから余計な混乱が生じてしまう。ともかく彼も勧誘対象に己も入っているようだと理解すれば、)ありがとう、ございます?(疑問の抜けきらない思考から率直な感謝がこぼれ落ち、言葉にすれば自然と実感が伴って、)じゃあ、楽しみにしてます。来週の学校見学も、今日からの練習も。(そう紡ぐ頃にはゆったりと構えた笑顔も元通り。元来長く悩むことはしない性質だ。改めて本日の約束事をおさらいすれば和やかな雰囲気のまま暫し雑談が続くのだろう――と思っていたが、そうは問屋が卸さない。先んじて勉学に励んでいたチームメイトが雪遊びにしては長すぎる乙坂の不在をいぶかしむには十分すぎる時間がすでに経っていた。「乙坂!」背後から尖った声で刺してきたのは我らが白鳥中キャプテン。彼の存在に気付いた大東が体育会系らしい生真面目さで「あ、三井さん。うちのがご迷惑をおかけしました」と乙坂の首根っこを摘まみ上げたものだから、)ぐえ。(と喉から潰れた悲鳴が。)ちがうよ。大事な話、してただけ。(サボりではないのだと言うように「本当だって」「ね、ミッチーサン」と言いつのれば、彼のとりなしは期待できるだろうか。いずれにせよ今は自習時間だと言う厳格な部長に回収される未来は近く、残念ながら秘密の会議はこれにて終い。)
* 10/13(Fri) 02:01 * No.165

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まあな。よく言われる。(実際には“情熱的”と称されているというよりも、単に“炎の男”と直球に称されて、且つそうと称する相手も限られているような――どちらにせよ彼の知る由もない話だろうから、多くを語ることはしなくても良いだろう。彼が湘北の試合を直接目にすることがあるとして、その時に目にする応援旗があればそれでいい。きっと笑うに違いないが。)そうか?オレが口煩く言うせいで逃げられても困るし、適度に控えようとは思うけどよ……。(求められたいか求められたくないか、自身で道を定めたいか等の感覚は人それぞれだろうから。同室となる彼の内にも燃える闘志があることは当然知っていて、だからといって執拗に勧誘を続けることがプラスに作用するとは流石に思えないものだから。そのあたりの加減は直接顔を見て判断するつもりでありつつも、一人でも多くの中学生を湘北に勧誘したいとの思いは未だ変わらず。実際に、湘北というチームに貢献出来た日数で言えば数えることが容易い程度である以上、これから先に繋ぐことに力を入れたいと思う気持ちは、それこそが傲慢かもしれないが。)そう。お前も。――別にさ、自分で考えて出した結論だったら、オレが勧誘したところで関係ないだろうとも思うんだよな。オレだって色々スカウトされたけど、結局自分で湘北を選んだ訳だし。でもそれには理由があって、オレがそうしたいって思ったから今此処に居るっつーか……まあ、あれだ。何処にするか決め切らねーとか、そういう時には湘北を選べよ。(学校見学に今後の練習風景等が、少しでも彼の検討材料となればいいとは思うけれど。複数の選択肢が目の前に広がっていることに変わりはないだろうから、悩んだ際の後押し程度に己の言葉を内に留めてくれるのならば、きっとこの邂逅にだって意味がある筈だから。彼の世話に慣れている様子の白鳥中キャプテンとの遣り取りに肩を揺らして笑ったり、届いた言葉に「おう」と快活な同意を示したり。秘密の会議はあくまでも男同士の秘密に終始するから、三井も多くは語るまい。それよか、話を逸らすように彼のチームメイトへと振る話題は、新たに会話に加わった彼の現状を尋ねるといった、先輩らしい其れであったに違いない。)
* 10/26(Thu) 20:24 * No.209