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【5】11/30(月):夕方 第二体育館>ツカサ

なあんだ。今日はまだどの高校に行けるかわからないんだ。(最終日はパーティーがある、そのことばかり頭に残っていた。それと、「やっぱり監督たちの話を聞いてなかったのか」とため息をつく大東礼次郎が自分と同じ高校を志望していた話は憶えていたが。センターとして高さだけではなくパワーも備えた屈強な体、面倒見がよく生真面目で情に厚い性格。部長になるべくしてなったような頼れる彼と進路を合わせたわけではないけれど、もし二人して同じ道に進めるのであれば嬉しいに決まっている。)そっか。じゃあまだだれがおれのチームメイトになって、だれがライバルになるかわからないんだ…。(この場に居るメンバーが春にはチームメイトかライバルか、もちろん卒業する者も居るので皆が皆その括りに当てはまるわけではないけれど、わかれば事前に挨拶の一つや宣戦布告の二つ三つはする気でいたのに。明らかにがっかりした顔で呟くも、「まあ気になる奴は居るなら何処を希望したか聞くくらいはしてもいいんじゃないか?」「全員の希望が通るってわけじゃねえだろうが」と言われれば確かにそうだと頷いた。いずれにせよ明日からは暫く会うことが叶わない者たちばかりなのだから、気になる相手には片っ端から声をかけてみることにして。)――あ、いたいた。ツカサ!(そうして最初に見つけたのはユニークな髪型が素敵な他校のエースだ。以前夕食を共にしたときに改めての自己紹介は済ませ、その後の合同練習では1on1もした仲である。県大会の頃よりもいい勝負ができたものの、攻守ともにまだまだ彼の方が上手という結果に悔しがって「また今度」と半ば一方的に約束をしたのだが、今日までの練習時間内にそれが叶うことはなかった。あわよくばその「今度」についての話もしたかったので、)いっしょに話そうよ。おれツカサに聞きたいこといろいろあるんだ。(いつかの唐突な夜の電話と同じように、前置きなしに切り出した。)
* 10/29(Sun) 15:26 * No.220

(長いようで体感としてはとても短く感じた合宿兼交流会も本日が最終日。全4回の学校見学を終え、進路希望調査も恙なく提出し、土日の内にアパート内の荷物を纏め、斯くして迎えた此日は練習よりも送別に舵を切ったよう。訪れた第二体育館は既にパーティーの準備が整えられており、監督らの話を聞き終えてからおのれも皆とおなじようにパーティーの雑踏に紛れたのだった。こういった雰囲気の中で賑やかしになるわけでもなく、誰かとの別れを惜しむような性分でもないものの、世話になった先輩や切磋琢磨したライバルたちへは挨拶回りはするつもりでいた。同室となった先輩と交わした言葉を思い出しては、いつものように気さくに話し掛けてくれた自校のセンターとジュース片手に進路調査について話しを交えつつ、世話になったという翔陽の選手のところへと駆けて行く大きな背を見送った折。)……乙坂。(名を呼ぶ声に振り向いてみればそこに居たのは県大会で苦戦を強いられた相手、白鳥中のエースフォワードだった。苦戦を強いられたといっても彼自身に対して特別ライバル意識を燃やしたり敵対心を剥き出しにしているというわけではなく、彼の体幹を含む身体能力に関しては寧ろ感心を覚えたほどだ。この合宿を通してその人柄に触れる機会もあれば尚のこと邪険にする筈もなく、)聞きたいこと? ……また1on1しようとか、そーいうやつか。(思い浮かぶのがバスケットであるあたり、男もまたバスケ馬鹿であることは否めない。じ、と窺うように彼を見遣ったのも束の間、)……飯食いながらでもいい? 学校終わりだからさ、すげー腹減ってて。(視線はすぐに傍らのパーティーテーブルへと。喉を潤したあとは腹の虫を鎮めなければならず、手近な紙皿にからあげを幾つか取りながら「一緒に食う?」と問いかけた。)
* 10/29(Sun) 23:59 * No.222

うん。そうそう。(どんな時にも真っ先に思い浮かぶものがその人をその人たらしめているものなのだろう。今回に至ってはまさしくその通りだったので微笑ましく思って口元を緩めるもそのまま頷き、「1on1、今度またやろうって言ったでしょう?」と。鋭い眼光に見つめられても居心地悪そうにするでもなく、)もちろん。おれもおなかすいてたから食べよう食べよう。(育ち盛りの学生らしい提案には二つ返事で。今日のパーティーをあてにして間食もそこそこにやって来たので腹の空き具合は同じようなもの。彼の問いには「ありがとう」と微笑んで、プラスチックのフォークで紙皿の上のから揚げを一つ突き刺した。そうしてぱくり、お互いにしばらく咀嚼のための沈黙が下りようともそこに気まずさは存在せず、放っておけば緩やかに自分のペースで勝手に喋りだすことを彼はもう知っていただろう。)……この間の1on1が楽しかったから、またしたいなあって思って。(食べ終わりと同時に再開した会話は先ほどの続き。)でも明日からなかなか会えなくなるでしょう? だからその前にツカサと話しておこうかなって。あ、これあげる。(そして二つ目のから揚げを突き刺しながら、制服のポケットから取り出したのは小さな紙片。よく見ればノートの切れ端とわかる歪な輪郭は思いついたままにちぎって来たのがありありと伝わるか。其処に並んだ『0466』から始まる番号の正体は文脈から察せるはず。)休みの日が合ったらどこかでやろうよ。(来年の春からどうなるかはまだわからぬが、少なくとも当面彼が他校生に戻ることだけははっきりとしていたので「いつか」という曖昧な約束に明確な形を与えたがった。)
* 10/30(Mon) 23:56 * No.229

(他校のエース。ポジションは異なれど、県大会で対峙した折は彼の独特なリズムにディフェンスは苦しめられたものだった。この合宿で1on1をした時も完全には止めきれず、再戦の言葉を交わして別れた先日の記憶を呼び起こしては「憶えてるよ」と小さく頷いては相槌を打っては、彼の許可を経てから取り易いようにそちらへ皿を差し出そう。彼がからあげを食べたのを確認してからおのれも口へと運びつつ、沈黙の気にならぬ男は暫し腹を満たしながら彼の言葉を聞いていた。)……俺も、お前との1on1はおもしれーと思ってるよ。すげー予想外の動きしてくるし。……つか、バスケはじめて1年くらいってマジ?(ごくんと咀嚼していたものを飲み込んでから、ぽつぽつと言葉を紡ぎ始める。チームメイトと1on1をすることも多いけれど、刺激で言うならば彼に優る選手はそうはいまいと思っている。合宿中小耳に挟んだ話によると、しかもバスケ歴は浅いときた。真偽を問うように眼差しを向けた折、差し出されたものに気付いてはゆっくりと瞬いて。)……俺と? 来年もまたライバル同士になるかもしれねーのに、いいのか。(他校生と仲良くなってはいけないとは思わないが、それでも彼の学校にも強い選手は居た。練習相手を求めるならばわざわざおのれである必要はなく、仲良くという意味であればなおのこと適任は他にもいるだろう。ただ、)どこなら会いやすい? ……個人的には大船駅あたりなら助かるけど。コートある場所知ってるし。(それでも断る理由にはならないから。おのれの住まう地域は繁華街に近く、海辺から遠いことは自覚しているゆえ、それとない希望を添えては前向きな意思を伝えよう。)
* 11/1(Wed) 12:32 * No.233

(「実はあんまり話したことがないんだ」と、いつか彼のルームメイトに告げた言葉は嘘じゃなかった。県大会、合同練習、いずれも彼と対峙するのはコート上でばかりだったから。一方的に気安い挨拶をかけることくらいはあったろうが、「おれ、ツカサとなかよくなりたくて」なんて胸の内を堂々と告げたのは約束が果たされた夕食の時のこと。その時彼はどんな顔をしていたっけか。冗談だと思われたか、すぐにバスケの話題に流れたような気もするけれど。)うん。おれ、去年の秋に日本に来て、冬頃監督にスカウトされてバスケ部に入ったんだ。(とはいえあの時は詳しい来歴などは話さなかった気もして。おしゃべりな男はいつ誰に何を話したのか忘れて再放送するのも常だった。日本の鶏はおいしいな、と唐揚げを頬張りながら、なんてことないように疑念の眼差しにはイエスと答えて。)え、だめなの?(そして彼の念押しには、むしろライバル同士が一緒にバスケをしてはまずいのかと心底驚いたように問い返す。)違う高校の友達と、バスケをしたらだめ?(きょとんと、黒々とした瞳に映し出す思案顔とは対照的に。彼のことを丁度いい練習相手だなんて思っていない。バスケ選手としても、一人の人間としても、ただキョーミがある。)……!(ゆえに彼が前向きに検討する姿勢を見せてくれたなら、散歩に行くぞと言われた飼い犬のようにぴくりと耳が反応し、)いいよ。どこでも!(わんと吠えた。欲しいものを得るためなら労力は惜しまない、というより労力を労力と思わないタイプである。彼の挙げた駅名がどの辺りにあるのかなんて想像する前に二つ返事で頷けば、「やったー!」とプラスチックのフォークごと万歳をして。)おれね、ツカサのシュートフォームが好き。すごくきれいで、たくさん練習したんだなあってわかるお手本みたいなフォームでしょう。好きなこと、ずっとがんばれる人でしょう? だからもっと一緒にバスケして、おれもそうなりたいなって思うし、それだけじゃなくて、なかよくなりたいなあって思うよ。(それから連絡先を渡した理由を連ねたのは、彼が忘れているかもしれない、乙坂があの夜彼に電話をした“そもそもの”目的を伝えるため。乙坂夏海は江藤良と仲良くなりたい。締めくくりににこっと笑えば、次はポテトに手を伸ばそうか。)
* 11/2(Thu) 00:56 * No.235

(正直な話『仲良くなりたい』といわれた時は驚いたものだった。面と向かって告げられたことなど過去を遡ってもそうはなく、きょとんと間抜け面を晒した挙げ句、言葉に困って逃げるようにバスケの話題へと舵を切った過日。だというのに変わらぬ笑顔を向けてくれる彼へと少しばかり申し訳なさを感じはしていたが、不愛想がさいわいしてそういった内面が表情に出ることはなかっただろう。もっとも、彼のバスケ歴を本人の口より聞いた瞬、驚いて瞠目してしまうのだけれども。)去年の冬って……じゃあ大会ん時ではじめて半年くらいってことか……? それであれかよ、……すげえな。元からなんか別のスポーツとかやってたのか。(生まれ持っての才能か、或いは異なる競技で身に付けた感覚なのか。どちらにせよ彼が“エース”と呼ばれている理由の片鱗を見た気がして、これからどんどんと成長していくだろう兆しを感じては吐息を落とす。もっともだからといって怖気づくことはもちろん負けてやる心算もないのだけれど、まさかその相手とこれからも一緒にバスケをしようと言われるとは思わなかったのだ。それもプライベートで。いっそ大袈裟なほどの反応をもらったならばやはり瞳を丸くしてしまったけれど、続く言葉を聞けば耳に熱が集まるのがよくわかった。)……、……あのさ。……いや、やっぱなんでもない。(そういうのは恥ずかしいから控えてほしいと告げようとしたものの、けれどもそれが純粋な好意であるとわかるからこそ野暮な言葉はぐっと呑み込んで、)乙坂はさ、なんでバスケやろうと思ったんだ。(『おれもそうなりたい』と今し方告げられた言葉を掬い上げては、未だに道を模索中であろう彼へと眼差しを向ける。)……俺は兄貴のプレーを見て。高く放たれたボールが次々とリングに吸い込まれていく光景がすげえ綺麗で、その時の会場の歓声や熱気も含めて忘れられなくてっさ。……だからたくさん練習してんだ。出来ればこの先も長くバスケを続けていけるように。(それがバスケを、好きなことをずっと頑張れる理由だ。ゆえに、)……そういうわけだから、練習相手は大歓迎。(つまりこちらとしても、彼が本気なら仲良くなりたいとそう思う。口の端を緩くもちあげて笑っては、そのままプチトマトへ手を伸ばした。)
* 11/3(Fri) 17:02 * No.238

まあ、それくらいかな? ううん。これっていうスポーツは何も……ああでも、ダンスは毎日踊ってたよ。(誇張ではなく音楽が止まぬ街で呼吸と同じくらい自然なこととして。リズム感、体幹、体力、空間把握能力、柔軟性――故郷が乙坂に与えてくれたギフトは様々だったが、どれもスポーツをする上で必要なもの。加えてバスケは球技の中でも最もリズミカルでパルスリズムが勝敗のカギを握るスポーツ、つまり、宿した力が一番生きるスポーツだったと言えよう。同じ球技でもサッカーやバレーではここまでピタリとはまらなかったはずだ。彼の感嘆を嬉しく思うのは単純に褒められたからというのがひとつ。もうひとつは、そうした長年培った才を自ら磨き上げたとて未だ叶わないライバルであり目標に認められたから。願わくば「すごい」の先の「まいった」も聞いてみたいなんて欲深な気持ちがこれからも彼とバスケがしたいという願いに結びつくのはごく自然なことだった。)……?(そんな好意や欲求を伝えるのに遠慮が要るなど考えたこともない男は、彼の耳が熱を孕んだ事実もその理由にも気づかぬまま、言いよどんだ先の問いだけを真っ直ぐに受け止めて、続く彼の言葉を聞いていた。)そうなんだ。(彼と違って己とバスケを結び付けたものは単なる監督によるスカウトだったが、彼が真摯にバスケに打ち込む理由を耳にして、いつかの遠い情景が感動とともに今でも彼の胸に住み続けていることを知れば眩しいものでも見るかのように目を細め、)だからツカサのボールはきれいにゴールに入るんだね。(純度の高い憧れを現実のものとするために一体どれほど練習を重ねたのだろう。それはバスケを始めて1年も経たぬ己が簡単に追い越せない量に違いなかった。そうして最後に添えられた彼なりのOKサインに気づいたなら、とびきり顔を明るくして、)ふふ、ありがとうツカサ! バスケも、それ以外のこともたくさんしようね。(勢いのまま彼の両手を己のそれで包み込んだ。タイミング次第でプチトマトは彼の指先で宙ぶらりんとなったかも。)おれのことバスケ部に誘ってくれた監督に感謝しなくちゃ!(ついでに先の質問の答え合わせと相成れば、)あ、でも誘われたのがきっかけだけど、続けたいって思ったのはおれだからね。(と言い添えて。もしもバスケを続けようと思った理由を問われたならば、「楽しいから」と端的な言葉が飛び出すだろう。)
* 11/4(Sat) 19:45 * No.242

ダンス?(思わず瞠目したものの、あの独特なリズム感はそれで培われたものかと妙に納得してしまったのは彼とコートで対峙しているからに他ならない。他のスポーツからバスケに転身するという話も珍しくなければ、なにが活きてくるかわからぬものだと双眸を伏しては改めて鍛錬を積まねばなと身を引き締めるのだった。その為に悩んだ果て、かの高校への進学を決めたのだから。――しかしてらしくない自分語りをはじめてしまい、後悔したのは完全に口を閉ざしてから。チームメイトにだって打ち明けたことのない心の内の情景を如何して零す気になったのかと、彼からもらった相槌を思い返してはまたしても耳に熱が集中するのがわかった。パッと華やぐ表情をみとめてはきまりが悪そうに眼差しを逸らしつつ「……おう」とぶっきらぼうに返事を返す。照れ隠しの意味でプチトマトに逃げようと思っていたのだが、)なあ……その、……手、恥ずかしーんだけど……。(トマトが口に運ばれるよりも先に手を取られてしまってはそれも叶わず、どこか観念したようにぽつりと零した。)……いい監督と会えたんだな。(勧誘に然り、元の才能もあっただろうがそれを此処まで伸ばした手腕は侮れまい。感心したように呟きつつも、彼がバスケを続ける理由を聞いたなら、ふっと口許を綻ばせて。)俺もだよ。……バスケ、楽しいよな。なんだかんだ難しいこといったけど、やっぱそれが一番っつか(はじまりは兄であったけれど、今もなお努力を重ねて技術に磨きをかけているのは、彼のいうとおり『楽しいから』だった。今度こそ先刻食べ損ねたプチトマトを口に運びつつ、改めて暫く会うことのない選手たちの顔ばせを一瞥しては「乙坂」と彼の名を呼んで。)……希望通りの高校はいけそうか?(未来のライバルへ宣戦布告を告げるように不敵な笑みを添えては、そう問うた。)
* 11/7(Tue) 15:58 * No.253

え? あ、…ごめんごめん。あはは。(その手をとったのは無意識に近い行為だったので、彼の呟きが落ちる先に視線を向けて事態を把握するまでにまず一拍、それからようやく両手を放すも緩んだ頬はそのままに。照れた彼の姿が微笑ましくて。)…うん。いい監督といい仲間に会えたよ。(それから、いいライバルにも。ダンスの世界にも競争を持ち込もうと思えばできたけれど、乙坂の馴染んだ世界は音に乗り、身体を解放することの楽しさに重きを置いた世界だった。ゆえにこうして同じ目標に向かって共に切磋琢磨するという経験は初めてで、それもまた楽しい理由の一つ。彼の同意を受ければ「ね」と嬉しそうに相槌を打ちながら、)ずっと走って、跳んで、にらみ合って、一瞬も気が抜けなくて、ずっとわくわくしてる。(疲れても、勝っていても、負けていても、全身の血が楽しいと騒ぐからバスケが好きだ。やがておしゃべりも過ぎれば少し喉が渇いて、手近な紙コップに手を伸ばす。)ん?(すると改まった声で名を呼ばれ、振り向くと先ほどまで振り回される側の顔をしていた彼が不敵な笑みを湛えて其処に居た。)……うーん、どうだろう。(一方応える此方は繕いのない顔で呟いた。)行きたいところの名前を書いたけど、行けなかったら行けなかったで別にいいんだ。おれはどこでもバスケができたらそれでいいし、この合宿で、どの高校に行ってもすてきなチームメイトがいるってことがわかったし、倒したいライバルたちもたくさんいるって知ったから。(それから二つのコップにカルピスウォーターを注ぎ終えると、当然のように片方を差し出しつつ、)けっこう悩んだんだよ。好きな人と同じ高校にするか、ちがう高校にするか。(やわく笑いながら呟いた。“好きな人”とは彼のことを指していたし、ルームメイトやチームメイトを指してもいた。)そういうツカサは? 高校でもおれとライバルになれそう?(彼の返答がどのようなものであれ、無事に飲み物が彼の手に渡るようなら「ちがう高校でも友達だけどね」とコップを掲げて乾杯をねだった。)
* 11/7(Tue) 17:45 * No.255

(傍らで語られる想いに耳を傾けながら、甘酸っぱい果肉を咀嚼する。共感できるものが多いからこそ、彼の語りに釣られるようにおのれの中でもバスケへの想いが湧き上がり、不思議な高揚感が心を満たしていた。視線を向けた先、問いに対して返った答えは想像していたものと少しばかり異なっていたがゆえに、彼を見据える双眸は意外そうに丸みを帯びたけれど。)……へえ。乙坂でも悩むんだな。……勝手だけど、こーいうもんは迷わず好きなとこに行くと思ってた。(あらかじめ此処に行きたいと決めているならば、彼はそこに躊躇なく飛び込んでいけるような人物だろうと、短い付き合いながら勝手に解釈していた。そんな彼の口から『悩んだ』と聞くとは思わず、差し出されたコップを「サンキュ」と受け取りながら先刻双眸を丸くした理由を包み隠さず語ったのち。「でも、」と言葉を続けた。)悩むのはわかるかも。……俺も最後の最後まで悩んだし。憧れんひとのところに行くか、……それとも自分が強くなれると思ったところに行くか。(──結果としておのれは後者を選んだが、もちろんその選択に後悔はない。まだ決定ではないゆえにかの先輩には伝えていないけれども、決まり次第後日一番に伝えようと思っている。くだんの先輩の姿をそれとなく探すように体育館へと向けていた視線を彼のほうへと向けたなら、)……どうかな。まあ、どっちにしろ負けねえよ。お前には。……俺、1年でスタメン取るって決めてるし。(そんな生意気を紡いでは、おのれもコップを掲げて乾杯をし、カルピスウォーターの入った紙コップを口に寄せた。)
* 11/9(Thu) 17:45 * No.264

あはは。おれだって悩むことくらいあるよ。(他の中学生達が様々なものを秤にかけて思い悩んだようにとは言わないけれど。意外さを隠さぬ彼の感想にはからりと笑い、「好きなものと好きなもの、どっちを選ぶが迷うでしょう?」と言えばその実態が伝わるか。レストランのメニューのように選ばなかった方はまた今度、とはできないからこそ。好きな選手とともに戦いたいのか、負かしたいのか。どちらがより面白そうかを考えて、結局最後は前者を選んだ。とはいえ眼前の好敵手をはじめとする他校生についてはその進学先など知る由もなかったので、必然的に確定事項を考慮して。どっちにしたって“行ってみたい”学校には進学できる算段なので、そういう意味では先ほどの問いの答えは「行けそう」と答えるのが正しかったかもしれなかった。)ツカサも悩んだんだね。……なら、どっちに進学してもツカサにはうれしいことが待ってるわけだ。(目を細めてうんうんと頷く様は気の早い祝福を込めて。悩むというのはそれだけどの学校にも魅力があるということ。自ら決めた希望によって繋がれた縁であろうがなかろうが、進んだ先には得られるものが必ずあるということだから。そんな二人の未来を祝して音もない乾杯をしてのち、)いいね。やる気だ。じゃあおれもそれを目標にしようかな。ツカサに負けないようにがんばるよ。(その強気な発言には破顔して。彼が言うなら生意気ではなく心意気だろう。自らもそうなりたいと願うからこそ、彼を友として、目標としてこれからも精一杯励むつもり。──そしてそれは同じ高校に進学すると決まっても変わらない。チームメイトとして切磋琢磨することも、ライバルとして挑み続けることもできるからこそ、一番近いところでその成長を見せつけんとするだけだ。それこそ今は生意気な夢想に過ぎないが、いつか乙坂が彼と双璧を成す日だって訪れるかもしれないのだし。)
* 11/10(Fri) 00:03 * No.266

……まあ、そう嬉しいことばっかじゃねーだろうけどさ。それでも楽しみではあるかな、……通学時間だけはちょっと憂鬱だけど。(希望が通ったとしてもネックとなるのは通学時間だった。今は家から学校が近いだけに自転車で事足りているが、高校はそうはいかない。慣れるまで時間は掛かるだろうけれど、通学時間が憂鬱に感じぬほど充実した学校生活を送れればいいと双眸を伏しては「……まあ、お互い嬉しいことが多くなりゃいいな」と話を締めよう。彼のいう嬉しいことがなにを指すのかはさておき、お互い希望が通らずともバスケを続けていけることには違いないのだから。未来を祝するような乾杯は実にささやかなものだったけれども、不思議と先の言葉が叶うような気がして自然と口許が綻んでいた。)……ああ。いつかの1on1も楽しみにしとく。(彼の成長の早さを思えば内心気が抜けねえなと身が引き締まる思いだった。けれどもチームメイトの中にはそうして競い合う相手がいなかったからこそ、彼に対して期待を懐いている自分が居るのもまた事実。この時分ではまさか同じ高校に進学することになるとは思いもよらなかったけれど、春におなじ制服に身を包んだ彼を目撃した時に確信するだろう。彼とはきっと、おのれのいいライバルになるのだろうと。──もちろん友人としてもいい関係を築いていくつもりだけれど、それはまた別のお話。)
* 11/12(Sun) 20:28 * No.271