EVENT5
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【5】11/30(月):夕方 第二体育館

(なんだかあっという間だったなぁ、という感想はきっと此処にいる誰もが思っているに違いない。合同合宿の最後を締めくくる監督らの言葉を聞きながら第二体育館に集った錚々たる顔ぶれを一瞥しては、来年には高校バスケ界に居ない者も多いゆえ、もうこんな機会は二度と訪れぬだろうと改めてこの合宿兼交流会の貴重さを実感するのだった。アパートを掃除をしたのが昨日の日中で、荷物を纏めたのがその夜。同室の彼はもちろん、陵南のチームメイトや他校の実力ある選手らと過ごすバスケ漬けの日々はそれなりに楽しかったが、はじまりがあれば終わりは必ず訪れるものだ。ゆえに矢張り男の顔貌に浮かぶのは寂しさではなく、いつもと変わらぬ緩い笑み。そんな男とは対照的に心なしか寂しそうな表情を浮かべている13番を見つけたなら気さくに声を掛けつつ、他にも他校のスーパールーキーを構いにいってみたりとそれなりに自由に過ごしていた。しかして紙コップの中身も尽き、新しく飲み物でも取ってこようかと料理の並ぶテーブルの方へと足を進めた先。)楽しんでる?(そう声を掛けたのは、恐らくひとりで居ただろう人物へと。相手は中学生だったか、それとも高校生だったか。どちらにせよ掛ける言葉は変わらず、ふと彼から近くのテーブルの料理へと視線が映れば「あ」と声を零して。)それ、結構うまかったよ。おすすめ。(彼が料理を見繕っていたのかはわからないが、それ、と彼が居る近くのテーブルにあるシーフードピザを指差しては言葉通りおすすめしてみる所存。)
* 10/30(Mon) 00:36 * No.223

あーあ、終わっちまうな。(目まぐるしく過ぎ去った日々を振り返ってどこか惜しむような気持ちになるのは、これが単なる長期合宿ではなく交流会も兼ねた貴重な機会だったからか。思えば引退したはずの3年達や日頃共に陵南を背負うチームメイトたちと同じアパートで暮らすなんて事態があまりに非日常的で、そのうえ他校生や個性的な中学生まで揃って毎日バスケ三昧ときた。だがこういうものは終わるからそのありがたみがわかるわけで、いつまでも感傷に浸ることはせず、明日からは今まで以上に本腰を入れて冬の選抜に向けた練習に取り組まねばならないと頬を叩いて気合を入れたのが昨夜のこと。どうにも真剣みにかける部長の分まで、陵南を引っ張っていかなくてはならないのだ。)――お、なら食っとくか。(とはいえ、楽しむべき時は楽しむべきで。人並みに賑やかな空間もジャンクフードも好きなので、空腹を満たしつつ合宿中それなりに交流のあった中学生と話をしたり、他校の2年達と情報収集も兼ねて話してみたり、紙皿の上の食べ物が尽きたところで新たな品を求めてやってきたところ、背後からかかった声に気安く答えつつ振り向けば、)って、仙道かよ。(あまりにも見慣れた姿に「なんだ」とあんまりなリアクションを。けれどこれは二人の間によくある光景であり別段失礼なことという認識もない。練習もなければこの後は家に帰るだけとなった学校終わり、制服の白シャツにスラックス姿のまま。勧められた通りシーフードピザを一枚皿の上に乗せれば、シャツを汚さぬようにそっと持ち上げ先端から食らいつつ、)お前こそ、楽しかったかよ。(問い返すは、このパーティーについてのみならず。)
* 10/30(Mon) 02:16 * No.225

(本日は部活もなく、学校帰りということもあってかジャージよりも制服姿の生徒が多く、男も例に洩れず制服の学ランを纏っていた。しかして声を掛けたのは見知った背中。日頃の遣り取りを通して彼もそれなりにこの交流会兼合宿を楽しんでいるように思えたから、つい先刻別れたばかりの13番のように様子が気になってのことだった。陵南のことを想う彼のことだ。恐らくおのれ以上に勧誘には力を入れていただろうし、交流を持った学生も少なくはないだろう。特別感傷に浸っている様子もなく、今のところ常と変わらぬ様相をみとめては振り向いたかんばせへと笑いかける。気安い言葉の遣り取りに「ひでー」と笑って紡ぐのも一連の流れの内。一歩歩みを進めて彼の隣へと並んでは、おのれもまた紙皿の上におすすめしたシーフードピザを取りながら、問いが向けられれば彼へと視線を流して。)楽しかったよ。色んな奴らと話せたし、それに県予選じゃ戦えなかった翔陽とも練習試合が出来たしな。翔陽は冬の選抜まで三年が残るって話だし、冬の選抜も厳しくなりそうだ。(冬の選抜では誰がどのポジションを担うのかはまだ監督の采配待ちであるけれど、順当に行けば彼か、もしくは8番の植草にポイントガードの役割が行く筈だ。海南のエースガードと県内トップを競い合ってきた男への対処はもちろん、前キャプテンと副キャプテンが抜けた陵南は高さでも圧倒的に不利な状況であるけれど、『厳しくなりそうだ』と紡ぐくせ、男の顔貌は険しいどころか相変わらずのんきだったろう。少しだけ冷めたピザを一口食べては、「うめー」と感想を零しつつ。)越野こそどうだった、この合宿。(昼食の折に今日の数学のテストはどうだったと問うような気軽さで問いかけるのは、彼に向けられたのと同じ質問。純粋に、彼がどう感じているか知りたかった。)
* 10/30(Mon) 22:33 * No.227

確かにな。翔陽とは練習試合も出来てなかったし、この合宿で藤真さんたちと一緒にやれたのは大きかった。(彼の性格を考えればオウム返しのように「楽しかった」と返ることを予期してまずは咀嚼を優先したが、続く先を見据えた言葉には適当な相槌では済まさなかった。頼れるディフェンスの要であった3年達が抜けた今、後輩センターのフォローも考えると高さとテクニック、視野の広さを併せ持つ彼がどのポジションを担うかで新生陵南のカラーはガラッと変わってくるだろう。海南戦の時のように彼をポイントガードとして藤真にぶつける作戦も無しではないだろうが、おそらく自分と植草が新たな守備の要として戦っていかなくてはいけないのだ。それが分かっているからこそ、ため息こそつかぬが彼のようにのんきに笑ってもいられなかった。内心お前次第だぜ、と思ったものの、皆まで言わずにピザの耳に噛みついて。)そうだな……まあ、俺も楽しかったぜ。お前の言う通り他校の奴らと色々やりあえたのは勉強になったし、中学生達もなかなか面白い奴が多かったしな。(同じ問いに対して真っ先に答えることは彼と大差なく、おそらく参加者全員が此度の合宿を有意義に過ごせたに違いなかった。だが、思い返せばそれだけにとどまらず、)ま、仙道が思ったより色々考えてんだってわかったのは収穫だったかな。陵南の今後のこともそうだけど、俺はてっきり中学生なんてほっぽって勝手に釣りに行ったりサボったりするんじゃないかって思ってたし。(少々の皮肉も込めて笑ってやった。越野の誕生日もそうだが、先の休日の一件など、失礼ながら彼が想像以上にルームメイトの面倒をきちんと見ていたのは意外だった。人並みに親切な男ではあると知っているが、それと面倒見の良さはイコールではないのだし。)仙道が共同生活、しかも中学生と同室なんて相手から苦情が来たらどうしようかと思ったもんな。(とは、ルームメイトもおらず気ままな一人部屋を楽しんだ者が今だからこそ言えること。)
* 10/31(Tue) 00:58 * No.230

(誰がポイントガードを担うにしても課題は多いが、それでも楽観的でいられるのはチームメイトの力を信じているからに他ならない。彼の誕生日に口にした言葉に嘘はなく、言われずともおのれに求められているものも理解をしているからこそ、すべてを呑み込んだ上で笑うのだった。それに成長しているのはなにも後輩だけではない、男もその内のひとりであるのだから。)ああ。出来ることなら彦一や菅平も連れてきてやりたかったな。(彼も『楽しかった』と振り返るこの合宿が単なる強化合宿ではないことは承知の上で、それでも有意義なものであったからこそ成長途上の一年生たちにも経験を積ませてやりたかったというのが本音だった。特に情報収集に長ける後輩の方は県下NO1を競い合った選手たちが一堂に会するこの合宿に参加できないことを酷く嘆いていたゆえに、当時の様子を思い出しては少しばかり苦く笑いながら。しかして続いた言葉にも、日頃の行いがあるからこそと思えば耳が痛いとさっぱりと笑うだろう。)ははは、ひでー。サボりに関しては否定できねーけど、同室のオトサカ君、越野も会ったことあるだろ? おもしれーやつでさ、放っておくには惜しいやつだった。それに万が一苦情があったとしても、越野がフォローしてくれただろ。(部屋は隣同士なのだし。彼ほど面倒見がいいとはおのれ自身も思ってはいないから、なんなら移ってもらうのもありだろうとは考えていた。甘えというよりは信頼であり、まあ万が一にもそんなことにはならなかっただろうとは思っていたので、万が一を紡ぐ声は実に気楽なものだった。ピザの最後のひとくちを口へと放りながら、咀嚼し終えたのちに口を開く。)……来年にはここに集まった奴らの大半が全国を争うライバルになるんだと思うと、なんだか感慨深いな。(ふ、と表情を綻ばせながら体育館に集った面子を眺めつつ、近場にあったサイダーを紙コップへとそそぐ。「いるか?」と彼へ見えるようサイダーを掲げる男の顔貌には、相変わらず寂しさの色はない。)
* 11/1(Wed) 22:08 * No.234

ひでーのはそう思わせるお前だろうが。(マイペースが過ぎる部長の尻拭いを担う筆頭だからこそ、軽やかな不平はフン、と鼻息で容赦なく叩き落としたものの、)ああ、乙坂。確かにアイツは色々と変わってるよな。仙道とは違った意味でマイペースっていうか。プレースタイルも独特だし。(話題が隣室の中学生についてとなれば顰め面も和らいで。「放っておけない」だなんて彼がそこまで他者を気にかけるのは珍しいなと思いつつ、思い起こせば彼はそういう“妙”な奴に面白さを感じる性質だった。加えてよくよく考えれば彼のそれは先輩としての責任感や庇護欲などではなく、“興味深さ”の延長にある「目を離せない」に近い気がしてああと頷き、)よく考えりゃ、別にお前が甲斐甲斐しく世話焼いてたってわけでもないか。なんか誰にでも懐くっていうか、距離感近いもんな。アイツ。(感想を漏らすは誕生日の一件を思い出しながら。すると芋づる式に彼の真剣な眼差しや小っ恥ずかしい謝辞の思い出もよみがえり、そこに調子のいいヨイショが重なればうろついた視線を虚空に放り、「ったく、俺は仙道の世話係じゃねーぞ」と悪態をつくまでが照れ隠しのワンセット。)ってことは、苦情が来なかったのは乙坂だから仙道のルーズさが気にならなかっただけな気がしてきた。(ついでに二重丸をつけつつあった仙道彰の『面倒見』の評価項目を丸に下げてのち、「ま、どっちにしたって仲良くやってたならいいけどよ」と締めくくれば他愛ない感想の発表会も一区切り。)……なんだよ、今日はやけに喋るじゃねーか。(そうして食事もまた一段落すれば、しんみりとした呟きの主をじろと見つめつつ、「…まあな」と答えてから「おう」の一言と紙コップを差し出した。涼しげな顔色に寂寥は滲まずとも、選ぶ話題の一つ一つが彼の心を表すよう。寂しさの代わりに期待と決意を。きっと明日の練習スケジュールすら知らないくせに、それよりずっと先を見据える男の輪郭が体育館の照明に縁どられ、一瞬ハッとさせられた。それがなんだか悔しくて、)でも、来年と言えばライバルだけじゃなくて仲間になってる奴も居るだろ。(沈黙を隠すように言葉を紡ぐ。)お前、勧誘は出来ないって言ってたけど、勧誘しなくたって陵南を選んでくれる奴を増やすための努力はしたんだろうな?(慣れたお説教モードは平静を取り戻すための狡い手だ。)
* 11/3(Fri) 21:00 * No.239

(かの中学生と何処となく波長が合うなぁ、ということは会話をした折に感じていた。似た者同士であるのか如何かは自分自身ではわからぬが、彼が言うのならばそうなのだろうと破顔する。おのれの胸の内を正しく理解されているとわかれば尚のこと。)そうそう。だから越野と同室でも仲良くやれてたんじゃねーかな。(彼ならば誰とでも仲良く出来ただろうと思えばこそ彼の言葉には同意するよう頷いて、眼前の彼へと視線を流す。しかして目撃した照れ隠しにはいつもの感謝も籠めてただ笑うのみに留め、面倒見についての評価には「そーかもな」とあっさりと認めよう。なんだかんだ言いながらも面倒見はいいんだよな、と締めの言葉に彼の人柄を改めて認識しつつ。)そーか? だとしたらこの空気のせいかもな。(差し出された紙コップへとサイダーをそそぎながら、確かに普段こんなに心の内を喋ることもなかったかと自覚するからこそ緩く口の端をあげて笑った。別に心の内を隠しているつもりはないが、彼の誕生日にも吐露したように何事も時や場所を見極めているのは確かだ。紙コップへと唇を寄せては賑わうパーティー会場を一瞥し、次ぐ言葉を聞けば彼へと視線を戻す。キャプテン争いが水面下で勃発している中でまだ明確には告げられてはいないけれど、時期副キャプテンは眼前に居る男だろうと確信していた。同じく陵南の未来を想う男の言葉に、)まーな。(ふ、と口許を緩めては言葉を続けた。)学校見学の案内とか1on1とか、応えられるもんには応えてきたつもりだぜ。越野もそうだろ?(それを努力と呼ぶかは迷うところだが、出来ることはそれなりにしてきたつもりでいる。しかしそれは眼前の彼も、「お、福田と植草だ」と遠くに見つけたチームメイトもおなじことだろう。ふたりへ緩く手を振りながら、)そーいや越野、どんくらいここに残るんだ?(彼の帰宅時間を何気なく尋ねたりした。)
* 11/6(Mon) 13:27 * No.249

お前でも空気にのまれることってあるんだな。(周囲を自分のペースに巻き込むことは得意でもその逆はなかなか見られないからこそ、意外な気持ちを隠さぬ声音で呟いて、は、と笑う。ついつい彼を何事にも動じぬスーパーマンのように扱ってしまうことが多いけれど、彼とて自分と同じ2年、陵南という大きなチームを乗せられた肩に少しも力が入らないわけがない。そんなことは誰だって簡単に想像出来るのに、日頃全くそんな想像をさせてくれない男が不意に見せる真剣な顔を狡いと思う。たとえサボり魔で遅刻魔で後輩たちに示しがつかないとしても、彼以外をキャプテンに据えることなんて無理だとわかってしまうから。)ま、お前はバスケしてんのが一番の勧誘になるもんな。(彼のバスケの実力とスター性は誰にも無視出来ないものがある。勧誘らしい勧誘などせずとも仙道彰が居るという事実が陵南の強みに違いなかった。彼なりに中学生たちとの交流を努めて行ったことを知れば頷いて、話を振られれば「まあな」と返すも、)いや、でも俺はちゃんと勧誘もしたぞ。回青の江藤とか桜井とか。あと白鳥の大東も。とにかくロングシューターは欲しいし、センターの層も厚くしときたいだろ。(お前とは違って、と言外に。彼が手を振る先に居るチームメイトや自分たちの強みでカバー出来ない部分は新たな戦力にも期待したいところであって、他にも何人か声をかけるだけならして回った。足を使って地道に事を成すのは此方の得意分野。そしてこの後の予定については、)特に決めてねーな。今日は飯食って帰るって家にも伝えてあるし、急ぐ必要もないからな。……仙道は?
* 11/7(Tue) 17:11 * No.254

はは。たまには悪くねーだろ?(空気に呑まれてみるのだって。とはいえ折角の送別会、真面目な空気になり過ぎぬようにと冗談めかして笑えば、先日の彼の誕生日のような空気になることもないだろう。――斯くして明かした努力へ理解を得られれば調子よく「だろ?」なんて笑いながら、)その辺りはうちに欲しいところだもんな。さすが越野。(チームのムードメーカーでもあり面倒見のいい彼のことだ、中学生とは仲良くやれているだろうとは思っていたけれど。挙がった名はいずれもこの合宿で比較的目立っていた選手のものであるあたり本当に頼もしい男だと、感心したようにふっと眦を緩めた。彼の声をかけた者に限らず誰かひとりでも陵南をいいと思ってくれたのならばさいわいだけれど、その結果を知れるのは恐らく当分先になるだろう。そしてその頃にはきっと、これまで自分たちの背負ってきた番号も恐らく変わっている筈だ。彼の予定を聞けば「そーか」と頷いて、返った問いかけには「んー…」と少し悩むような間を挟んだのち。)オレは魚住さんと池上さんに声を掛けたらぼちぼち帰るかな。飯も食ったし。(それに自宅まではそこそこの距離がある。早めに戻るに越したことはなく、この場に未練がないなら尚のこと挨拶回りをしたのちは留まる理由はなかった。それに、)明日からの練習、寝坊するわけにはいかねーだろ?(合宿が終われば明日よりいつもの日常がはじまる。先刻監督に朝練があることも告げられてはそうそう寝坊はしていられないだろうと、これまた調子よく笑うのだった。)
* 11/8(Wed) 23:19 * No.263

(1ヶ月近くも一緒に暮らしていればそれなりの情もわくのだろう。ルームメイトを与えられたメンバーの中には同室の中学生に固執する者も居たようだが、幸い自分は気ままな独り身。フラットな視点で中学やポジションを問わず様々な中学生と付き合えたのは大きかった。悔しいことに夏の実績だけを見れば陵南と翔陽はいささか不利なスタートで、そのうえ過去を振り返れば翔陽の名門としてのネームバリューにも少々劣るというのが事実。だが、逆に捉えれば幾らでも印象をプラスに変えることが出来るということ。うちにはどこぞのスーパーエースに負けない広告塔も居るのだし。)ま、色々話した感じ、反応は悪くなかったぜ。監督もその辺は押さえておきたいところだって言ってたし、他所と希望がぶつからなきゃうちに来るんじゃねーかな。(その際陵南の魅力の一つとして誇らしげに彼を語ったことは当人には教えてやらぬが。信頼を滲ませた感心の眼差しに悪い気はしないので、明るい未来を想像すれば語る口元に少しばかり喜色を浮かべて。)――そっか。仙道んちまあまあ遠いしな。(そうして合宿の成果も伝え終えればそろそろお開きの時間も近いよう。合宿所の近くに住む者はまだまだ歓談や食事に夢中のようだが、早い者はそろそろ荷物をまとめて駅に向かい始めているようだった。彼もまた自分より遠い場所に住んでいることを思い出して「おう」とすんなり頷いたものの、)……って、妙なフラグ立てるなよ。(続く殊勝な言葉を耳にすれば褒めるどころか眉をひそめて。けれどしかめっ面はほどなくして緩く解け、)ったく、その心がけ、明日の朝までちゃんと保てよ?(小さく笑えば、新部長の言葉を信じてみることにしようか。)で、遅刻したら明日の昼飯はお前のオゴリな。(ついでにちゃっかり罰ゲームも用意して。一方、宣言通り彼が寝坊せずに明日の朝練にやって来ることが出来たとしても、それはそれで「フツーのことだろ」と言ってやるだけ。彼に甘い顔を見せないことも、陵南バスケ部がうまく回る秘訣なので。)
* 11/11(Sat) 15:28 * No.269

(積極的な勧誘をしてこなかったがゆえにチームメイトや先輩たちがどのように陵南の魅力を中学生へ伝えていたのかは男のあずかり知らぬところだった。夏の実績でいえば全国には一歩届かず、強豪校と謳われてもおなじく予選を敗れた翔陽と比べたらこちらの知名度は低いのが現状だ。噂によるとバスケの週刊誌に陵南が取り上げられたとのことだけれど、こちらに関しては読んでいないゆえになんとも。されども知名度があろうとなかろうと関係ないというのがこの男の見解だった。手応えを得たらしい彼の言葉を聞けば「そりゃよかった」と矢張りのんきに笑って彼の健闘を讃えよう。ルームメイトともゆっくり話したいところではあったが、彼は彼なりにパーティーを楽しんでいるようなので会話に割って入るような強引な声掛けの必要はない。これが今生の別れというわけではなく、いつでも海が見れるように、彼と会おうと思えば明日にだって会えるだろうから。背の高い集団――翔陽の選手たちも帰り支度を始めているらしく、ぞろぞろと動いている様を横目に見ながら、眉を顰める彼のかんばせを見て笑った。)はは。努力はするよ。(その努力が報われたかどうかは明日の朝にわかるとして。罰ゲームの提案には「おう」と同意するよう笑ったけれど、そのあとで「焼きそばパンひとつでいいか?」と罰ゲームを受けることを前提で言葉を返す顔貌も、締まらない笑顔と共に。選抜へ向けての再出発、明日の朝練に無事に顔を見せられたかどうかは明日の男の気紛れ次第だった。)
* 11/13(Mon) 23:09 * No.273