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11/1(日):夜 1号棟201号室>チューセー君【1】

なにィ!? チューセー君は今日が誕生日なのか!? そーゆー大事なことはさっさと言わねーか!(と善意で情報提供してくれた彦一に理不尽な拳をふるったのは午前中、カボチャをくり抜いていた時のこと。近くにいた彼から話を聞けば、急いで監督たちに詰め寄って、「おいじじい共! コレ残った分はどーすんだ」とくり抜いた部分や余ったカボチャをもらえるよう交渉という名の我儘を。はじめこそ食い意地の張った桜木の失礼な言動に怒り、呆れていた監督たちも、よくよく理由を聞いてみれば同室の後輩の誕生日を祝いたい、だなんて意外にも健気な理由に許可を出してくれたのだ。そうと決まればさっさとノルマのジャックオランタンを作り終え、一足先に昼休憩。自宅のアパートまでひとっ走りして、何やら山ほど抱えて帰ると空っぽの1号棟201号室に駆け込んだ。)──ふっふっふっ、チューセー君。今日の夜はトンデモナイゴチソウだぞ。(歓迎会を終えた彼と一緒に部屋に戻るさなか、彼の反応が楽しみで待ちきれない、と言わんばかりの締りのない顔で告げた言葉通り、その夜、昨日以上に手の込んだ夕食が披露されることとなる。昼のうちに下拵えを済ませた夕食の準備はあっという間に整って、昨夜の残りの豚肉とタマネギで作った生姜焼きとカボチャの煮つけ。味噌汁は昨日の残りにワカメを足した。)食材を大事にする天才桜木、今日余ったカボチャもユーコー活用ってわけだ。(自慢げに料理を並べてのち、)それに、なんとアレもあるんだぜ。(アレの正体を彼が理解する前に、待ちきれず「今日は誕生日だからな。特別にこの天才がお祝いしてやる」と告げて取り出したのは食パンと生クリーム。つまりはケーキの前身である。)イチゴはちと高かったからよ、代わりにフルーツ缶とバナナ、オレんちから持ってきた。(ちなみに食パンは洋平から分けてもらい、生クリームとフルーツ缶とバナナは高宮がデザート用にと桜木の自宅に置いていたものを拝借したのだが、それは教えなくてもいいだろう。)つーわけで、メシ食ったら一緒に作ろうぜ。けっこーうめーんだぞ食パンケーキ。(賑やかな食卓が嬉しい二度目の夜。あれこれ説明するのに必死で言い忘れた「おめでとう」は、こののち、生クリームだらけの口から突然思い出されたように放たれるのだった。)
* 9/18(Mon) 21:08 * No.14

(誕生日を吹聴して回る趣味は持ち合わせていないものだから、11月1日という日は中世古にとっては単に合宿初日という認識でしかない日である。何せ所属を同じくする仲間達にすら、自ら誕生日を公言したことはないような。とはいえ合宿と次男の誕生日とが被っていることを知った家族には、事前にしっかりと祝ってもらったものだから、その時点で今年の誕生日は終わりを迎えたも同然との認識があったことも否めないが。――歓迎会という名のレクリエーションは少しばかり距離を置く形で、それでもありがたく受け入れる時間の過ごし方を選択した。慣れない季節行事は物珍しそうに遠目から見るに徹することとして、いざ解散となったところで届いた声は、昨日すっかり耳に馴染んだ同室の先輩のものである。帰る場所を同じくするのなら、確かに時間を異なる必要もないだろうと共に歩く道すがら。何やら楽しげな様子に傾いだ首も、すぐにその理由を目の当たりにすることとなる訳で。昨日の夕飯でも男子中学生の胃袋を満たすには十分であったにもかかわらず、目の前の食卓に並ぶのは昨日以上に豪勢なそれらだったから。)え、……いつの間に?(確かにこれはとんでもないご馳走だと、彼の顔と食卓とを視線が行き来して。彼の言葉から察するのは、彩り鮮やかなカボチャの出所は、レクリエーションの際にそこかしこに積まれていたカボチャらしいということだ。)アレ?アレって何、(更に重ねられた言葉に疑問を抱くも束の間、すぐに齎されるヒントは“誕生日”。単に歓迎の気持ちが並べられていたという訳ではなく、他にも豪勢な食事の要因があったことを知ったのならば、「誰から聞いたんですか?」と些か訝しげな表情を浮かべたりもしただろう。知り合って間も無さすぎる先輩に、まさかおのれの誕生日を知られていたとは思いもしてなかったからこそ。)フルーツ缶だけでも十分豪華なのに……その、すみません。わざわざ、取りに行っていただいたり……。……ありがとうございます。俺、そういうの作ったことないから、楽しみです。一緒に作るの。(定番であろうイチゴノショートケーキとは全く異なる、彼お手製の食パンケーキなるものを前にした時には、きっと口許には柔い笑みを湛えているに違いない。未だ知り合って片手にも足りない日数の中、少しでもおのれについてを考えてくれる彼が同室で良かったと――本人に直接告げるまで、もうしばらく。)
* 9/21(Thu) 00:14 * No.16