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【4】11/23(月・祝):午前 藤沢駅周辺

(朝の早い男はせっかくのオフだからといってルーティーンを崩すことはしなかった。通常通りの朝練とストレッチをこなし、祝日は閉まってる食堂の代わりにゆっくりと朝食をこしらえ、彼とともに食す。ちなみに今朝の桜木スペシャルのメニューは和食。昨日安売りしていた鮭の切身を焼いたものと、適当に具を放った味噌汁にご飯。沢山作ったはずのハンバーグは昨夜のうちに食べ尽くしてしまったので。)チューセー君、ちっと出てくる。けどすぐもどってくっから。(その後皿洗いのスペシャリストが後片付けをしている間に着古した白いTシャツとジーンズに着替えれば、一瞬姿を消したものの、宣言通りさほど時間をかけずに戻ってきたはず。その間に彼の支度も整ったろうか。もしも短い用事について言及されたならば、「ユーシを受けてきた」と答えたろう。)んじゃ行こうぜ。(そうしてほとんど手ぶらで街に出た。今日はいつもお世話になっている商店街とは逆方向、より栄えた藤沢駅付近にやって来た。道中彼の目を引くものがあれば気軽に立ち止まるつもりだが、はたしてその視線が長らく一ヵ所に留まることはあったろうか。)
* 10/16(Mon) 14:32 * No.173

(オフの予定は彼との外出と決まっていたから、その予定へ向け彼と交わした打ち合わせも幾つかあっただろう。朝は身体を少し動かして、朝食は彼が用意をしてくれたものを共に食して。皿洗いはすっかりおのれの役割として定着したから、当然のように後片付けを進めているさなかのことだった。)あ、はい。いってらっしゃい?(突然の言葉に驚きはしたものの、特段引き留めることもなくその背を見送って。そして宣言の通り、早々に戻ってきた姿に疑問は募るばかりであるけれど――尋ねるのは道すがらとなっただろうか。)今日はよろしくお願いします、桜木さん。(彼と時間を共にする機会こそ、この合宿を通して多くあるけれど。示し合わせて外出をする機会が多いわけではないものだから、貴重な時間に口許には小さく笑みも浮かぼうか。財布をジーンズの後ろポケットに入れた程度、Tシャツにパーカーを羽織る軽装で、彼と共に歩む先は駅前へと。周囲の至る所へ視線を向けはするものの、いずれも興味深い為に寧ろ一所に留まることはないような。寧ろ一番目を惹くのが隣を歩く明るい赤であるのだと、初めて留まった視線はおのれよりも高い位置で。)
* 10/16(Mon) 21:57 * No.175

まだこの辺は合宿所の近くと変わりねーな。(テキトーにぶらぶらするぞとまずは藤沢駅を目的地として歩いたが、道中はコンビニや酒屋、飲食店がメインで彼の気を引くほどの何かはなかったよう。歩幅の大きな桜木が少し先を行くような形になりがちなので、二人が完全に隣り合ったのは信号待ちの僅かな時間。不意に彼を振り返れば二つの視線はかち合うか。)ん? どーしたチューセー君。(行く先ではなく此方に向けられた彼の目を見て、)何かほしいモンでもあったんか?(さてはおねだりか。はたまた「それともこの天才に見ホレてたか?」なんて半分冗談めかして笑ってみせた。)まあ合宿ももうすぐ終わりだしな。存分に見つめておきたい気持ちはわからんでもないが、そんなに惜しまなくてもチューセー君はこれからもずっと見れるだろ。(そして此方は冗談ではなく本気の言。この半月ほどで彼との仲は十分に深まっていた自信があったし、育まれた友情はそのまま彼の進学先に直結すると信じてやまない単純王は優秀な新人のカクホがウンヌンカンヌンと熱心に話す先輩たちの話をろくに聞いちゃいなかった。今更勧誘だなんて焦らずとも、この天才桜木在るところにチューセー君在り、くらいに思っていたので。ゆえに信号が赤から青に変われば彼の反応を待たずして再び歩き出すのも容易い。)
* 10/17(Tue) 10:50 * No.176

(コンパスの差はあれど流石に置いて行かれることはしないだろうからと、彼の少し後ろを付いて歩いたり、ふとしたタイミングに隣に並んだりと、道中交わす言葉はこの合宿で重ねた時間を如実に示していただろうか。そうして振り返る視線と絡むのは、彼へと向けていたおのれの双眸で。)いえ。……凄いなって思ってました、慣れたとは思ってたんですけど。やっぱりその色、強そうだなって。(まじまじと向けた視線のまま、正直に浮かんだ感想を述べてみよう。彼が湘北の選手であり、神奈川県大会等でしっかりとバスケットボール選手として名を馳せていることを知っているからこそ、当初より抱く感想に変わりはないけれど。直接的に告げることに躊躇いを有さなくなったのは、きっと同室として過ごしてきた日々があるからだ。でなければ、そもそも関わりを持っていたかどうかすら定かでないのだから。)……え?(とはいえ、続いた言葉の意味を確かめる間もなく歩き出した彼の後を追うさなか、思案するのは先の彼の言葉の意味である。バスケの試合を見ていれば彼がいる、そういう意味かと思う一方。もう一つ思い浮かんだ可能性としては、それこそ今回の合宿に招待をされた一番の理由と言っても過言ではない――おのれ達中学生の、未来の話である。)他はどうですか?スカウトというか……勧誘の成果。俺、あまり周りのことを知らないので。
* 10/19(Thu) 00:29 * No.182

ぬ?(熱視線の理由はおねだりではなく後者だったよう。頂で輝く鮮烈な赤が人目を引くのは今に始まったことではなかったけれど、)だろう!(彼に凄いだの強そうだのと言われれば悪い気はしない。ふん、と鼻息荒く頷く男の脳内を漫画の背景のように書き起こせば『チューセー君にほめられた!』と浮かれ模様に違いない。カワイイコーハイと休日に遊びに出かけるなんて、桜木とて初めてだったので。)…ほか? ……ああ、カンユー…勧誘な!(して、駅までのまっすぐな道を行くさなか、投げられた話題に対する反応は随分と鈍い。それもそのはず。勧誘の鬼と宣ったくせ、いざ合宿が始まれば自分の楽しさ第一。桜木が行ったことと言えば、毎日のバスケと食事睡眠、時々中高生を問わず手近な者を巻き込んで遊んでみたり、ライバルと火花を散らしてみたり。そして毎日誰かしらに本日のコーナーよろしく「今日こんなことがあってよ!」と馬鹿でかい声で喋っているので、多くの者は知りたくなくてもその日の桜木花道ホットニュースを聞かされる羽目になるのであった。当然その中に特定の誰かを勧誘したといった話題はない。そういうわけで桜木が熱心に勧誘らしい勧誘をしたのは隣を歩く彼に対してのみである。それですら推薦状を押しつけたことに満足し、半ば確約と信じているのだからおめでたい話である。)んー、なんかミッチーはヨッシーを入れてやる!って気合入ってたみてーだけどよ、他の奴らのことはよく知らねー。ゴリとかメガネ君は他の中坊にも色々シドーしてやったり話しかけたりしてっけど、誰がどうとか聞いてねーし、リョーちんは…なんか言ってた気すっけど忘れたわ。…あ、でもルカワが何もしてねーことは知ってるけどな!
* 10/19(Thu) 00:59 * No.183

(彼によって紡がれた名前が、おのれの知る同級生であると理解するまでに要した時間はわずかほど。そういえばおのれの名前も彼は正しく認識しているのだろうかとは、なんだかんだ今日まで彼が呼ぶ名として紡ぐのは、初日から変わらずあだ名であったからだ。)ミッチーさんとヨッシー、同室ですからね。ウチからどれだけ湘北に進学するかはわからないんですけど、どうせなら知った顔が集まった方がやり易いとは思います。――でも、別のチームに行くのも、戦り合いたいとしたらアリっちゃアリかな……。(高校生からしても、こと勧誘という部分に限定をすれば向き合い方は人それぞれとなっているようで。面倒見の良い者もいれば我が道を行く者もいて、その背中で語る者とているのだろうと。相も変わらず特定の人物に対しては対抗心をあらわにするものだから、つい零れるのは小さな笑みだ。)桜木さん、俺が湘北に行ったら嬉しいですか?(彼の返答を最終的な理由とするつもりは勿論ないけれど、少なくともこの合宿に於いては一番近しい先輩だとの認識があるものだから、尋ねておいて損はないだろうと。そんな遣り取りを交わしつつも道中を行く足取りに変わりはないだろうから、周囲へ視線を向けた際に気に掛かるものがあるかどうか。駅に辿り着いた頃には流石に、合宿所周辺とは異なる店の並びに興味を惹かれることもあるかもしれないが。)実は結構悩んでて。湘北が楽しそうなのは、そうなんですけど……俺に合うのかなとか、色々。近所でって考えると翔陽ですし。湘北に通うのも、ちょっと大変だなって――(つらつらと語るのは実際に各高校へ進学した際に浮かぶであろう懸念事項等。裏を返せば前向きに検討をしていることともなるのだけれど、決め手に欠けるのはいずれの高校も同じなのだと。)
* 10/21(Sat) 00:13 * No.189

(ミッチーにヨッシー、それからチューセー君。一度刷り込まれたあだ名とは別に彼らの本名も流石に知っていたけれど、今さら別の呼び方をしようとは思わなかった。)ヨッシーとチューセー君が揃えばコンビプレーもイケそうだもんな。んじゃミッチーにも勧誘がんばってもらうとして、チューセー君からもヨッシーにアピールしといてくれよ。(親しみをもって授けたあだ名だ。隣を歩く彼は当然として、先日予期せず仲を深めた江藤についても未来の後輩になるというなら依存はなかった。楽しい想像は膨らむばかりで、「頼むぜ」と機嫌よくその肩を叩くのはもう彼を湘北側の人間だと信じ切っていたからだ。だからこそ、)あたりめーだろ?(事実の再確認のような問いには迷いない断言を返事にかえて。まさか彼の進学先に湘北以外の選択肢があるとは思っていなかったので、わざわざ桜木からの好意を確認したがるなど可愛い奴めとおめでたい頭で思っていたくらいだ。ずんずんと進む足取りも軽やかに、気づけば駅前の賑わいに足を踏み入れていた。)――……え、(雑踏が彼の淡々とした静かな物言いにノイズをかける。否、桜木の脳が一瞬理解を拒んだと言うのが正しいか。ちょうどゲームセンターの前に差し掛かり、賑やかな店内の音楽が空いたドアから漏れだして、軽快なメロディがうるさいくらいに耳についた。)ちょ、ちょっと待て。(それからやっと我に返り、彼の語るこれからの話を整理する。)……チューセー君、もしかして湘北に来ないんか?(そんな未来があるのかと、口にしたら余計に愕然として目を大きく見開いた。「ウソダロ」と呟きは力なく。そんなはずはない。)だ、だって、どう考えても湘北が一番いいだろ!?(どの高校にも良い点と悪い点があることくらい知っていた。彼の家が湘北から遠いのもまあ何となく頭の片隅に事実としての認識はあって、だが別に県をまたぐわけでもないし、些細なことだと思っていたのだ。それになにより、)だって、……オレがいるんだぞ。(これ以上の決め手があってたまるかと本気で思っているのが真剣な表情から伝わるだろうか。自分宛だと思っていたプレゼントがそうではなかったと知った子供みたいな顔で、本気でそう呟いた。)
* 10/22(Sun) 01:36 * No.192

江藤にパスを出すなら、宮城さんにも安田さんにも負ける気はしないんですけど。俺からのアピールで足りるかな、桜木さんは三井さんのこと手伝ってあげてくださいよ。(実際に同級生たちが同室の先輩よりどのような勧誘を受けているのか、そういった情報共有は大して行われていないものだから。進学先を知る情報収集の為にも、そろそろ認識のすり合わせを行っても良いかもしれないとは、合宿終了が近くなった今としては遅いかもしれないが。問い掛けに対し返された言葉の明白なこと。それにはつい笑って、「ですよね」と受け入れるのだってあっさりとしたものだ。彼ならばそう返してくれる、そう知っていながらの問い掛けだったものだから。真っ直ぐ進む彼の後をついて行きながら、ゲームセンターの入口扉から聞こえる音に、視線はそちらへと。けれど続いた彼の言葉に、再び明るい赤へと向き直ったのなら、)行くかもしれないし、行かないかもしれない。(尋ねられれば答えはするものの、おのれの中でもはっきりとした答えが出ている訳ではないからこそ、明快な答えを返せないのが歯痒く申し訳ないところで。表情にもそうした感情は表れているだろうか、――乏しいながらに感情の揺れ動きが、彼の前では多少は明らかとなってきたと思うのだけれど。)うん。桜木さんが居るのも、他の湘北の方々が居るのもわかってます。(彼だけに限った話ではない。どの選手がどの高校に所属していて、それぞれどのようなチームであるのかということだって、この合宿を通してしっかりと自らの目で見極めようと意識していたから。どの高校も長所もあれば短所もあって、最高学年たる選手たちが抜けることで生じる穴があるとするのなら――そんなことを、最近は考えるばかりだ。)もう少し考えたくて。でも、湘北が候補に入ってるのは、間違いないですから。(今は未だ、湘北に進学したいと言い切ることが出来ないというだけで。尤もおのれ達は選ぶ側というよりは選ばれる側であるとの理解は当然あるものだから、進学したいと言い切れる高校が出来た際には、選ばれるようにと動くことが求められるのだろう。そしてそれはきっと、もう直ぐそこまで迫っている。)
* 10/23(Mon) 20:58 * No.195

(一言でいえばショックだった。流石に涙は出なかったが衝撃の度合いで言えばなかなかなもので、困惑の眼差しを静かに受け止める彼をただただ見つめていた。全てを理解したうえで、それでも「行く」とは言ってくれない彼の顔を。)……だったら、(湘北に来い、と圧をかけるのは簡単だが、その真剣な表情にはたと気づく。当たり前のことだけれど、これは単に彼が誰と一緒にプレーをしたいとか、そういった単純な好き嫌いだけの話ではないのだと。思えば彼には当然ながら家族が居て、バスケ以外の柵だってあるだろうと。表情に乏しいように見えて意外と移ろいやすいその感情の滲みを認めれば「うー」と唸るように声を出してのち、大きく息を吐いて、)…んじゃ、オレ様も勧誘がんばれってことだよな?(まだ少し拗ねた顔は残したまま、けれど先ほどよりも吹っ切れたように問いかけた。答えはどちらでも、もうやるべきことは決まっているが。)よし、そうと決まれば早速ここ入るぞ!(そうして半ば強制的に彼をゲームセンターに連れ込もうか。もちろん嫌がられれば強行はしないものの、彼のリクエストは「いつもの桜木達のように」とのことだったので。そして目的を問われるより先に「あれやんぞ」と指さしたのは中にぬいぐるみなどの景品が詰まったピンクの機械。単純思考の男は短絡的に彼にプレゼントをしようと思い立ったのだ。端的に言えば賄賂である。)ほれチューセー君、どれが欲しい? この天才がとってやろう!
* 10/24(Tue) 10:55 * No.197

(正直に今の考えを伝えたつもりだから、それが彼にしっかりと理解してもらえたというのならば幸いだ。人の考えなど移ろいゆくものだから、合宿終了を近くして、明日にはまた異なる結論に至っている可能性も、また無きにしも非ず。どちらにせよ導き出した答えは、彼に伝えるつもりではあるのだが。)……ふは、そうですね。頑張ってください、勧誘。俺もでしょうけど、俺以外にも。(どうやら何か吹っ切れた様子の彼には表情和らげた。おのれだけでない他の中学生に対しても、彼が勧誘を掛ければ首を縦に振る者は居そうなものだから。同室となったから、彼の矛先がこちらへ向く瞬間が多かったというだけで、或いは――。そんな思案に沈むまでもなく、連れられた先となるゲームセンターの騒がしさには視線を彼方此方へ。何せ普段、ひとりで足を踏み入れる機会など早々ない場所だ。あったとしても同級生に連れられ向かう程度、自ら進んで何かしらのゲームに手を出すことも滅多にない。)え、ぬいぐるみ?取れるんですか?(様々に枠の中に収められたぬいぐるみたちを前にして、瞬いた瞳はそれらを映す。まるで品を取れることが当たり前かのような反応には、それが彼らの常だということが真っ直ぐに伝わってくるような。)……じゃあ、部屋に置けるようなやつがいいです。合宿終わっても家に持って帰れるような大きさの。(鞄に付けられるようなサイズ感のものでも良かったけれど、この合宿中は彼との部屋を彩る一助となるものが良いと感じたから。どんなぬいぐるみを部屋に置くこととするのかは彼に任せることとして。そもそも言葉の通りに、しっかりとぬいぐるみを腕に抱える未来が訪れるのかどうかすらも、彼任せとはなってしまうのだけれど。)
* 10/25(Wed) 21:39 * No.202

おう。この天才にアプローチされて首を縦に振らなかった奴は居ないからな!(強がりを大嘘に変えて豪語するも、桜木の失恋記録を知る友たちが聞けば涙ながらに大笑いしたことだろう。だが此処には真実を知る者は居ないのだから、実質彼さえ頷けば嘘も真になるというもの。彼にこだわるのは同室として長く時を共に過ごしたからという以上に、単純に好ましいと思っているから。人としても、バスケット選手としても。プレーヤーとしての彼は言ってしまえば地味だと思っているのだが、当たり前に下手だと思ったことはない。上手い、いい動きをすることも知っている。もしも語彙力があったなら、地味ではなく『堅実』なプレーヤーだと表現しただろう。だがそうした言葉を尽くして熱心に説くようなことは向いていないので、持ち前の行動力で彼を喧騒の中に連れ込むことに。)おうよ。(「取れるんですか?」と問われれば愚問だと言わんばかりに胸を張るが、実際こうした器用さが求められる遊びは親友の得意分野だった。けれど勢いに任せて大口を叩いた手前、)あんましデケーのはダメってことだな。ヨシ、この天才桜木に任せとけ!(もう減速は叶わない。早速手近な箱に近づけば、そこに山積みされているのは20センチほどの黒い毛むくじゃらのぬいぐるみ。大きな瞳の白目だけがぎょろりと目立っており、一見すると何が何やら。はて、)んー、ぱっとしねえがデカさは問題ねーな。なになに……不思議なパワーで元気をくれるおまじないネコ…? 持っていると願いが叶うかも…? なんだ、コレ猫なんか。(商品説明のポップを読み上げれば、どうやら巷で流行りのキャラクターらしい。それはさておき煽り文句は中々惹かれるものがある。もはや彼の好みなど聞くまでもなく、)じゃあやったるぜ!(チャリン。先輩から借りた軍資金を両替して早速100円玉を投入するも、)──……ウ、ウソダ…(わかり切っていたが結果は惨敗。「なぬ!」「ぬあー!」「どーして!」「まて、」「しっかり挟まねーか!」「落とすな!」「拾え!」「リバウンドだ!」「やる気あんのかコラ!!」あっという間に残りの100円玉は一枚。途中怒り狂った桜木が機械に掴みかかり暴れるものだから、隣の彼は随分肩身の狭い思いをしたかもしれない。良く言えば集中力の鬼、悪く言えば一度夢中になると周りが見えなくなる迷惑な客である。)
* 10/26(Thu) 00:08 * No.205

(確かに彼の快活さに巻き込まれる形で、その勢いに釣られ首を縦に振る者は多そうだとは勝手な印象かもしれないが。湘北に陵南、海南に翔陽。いずれの学校も引力の強い選手が確かに所属をしていて、それらの個性の違いも検討材料に十分なっている。最終的にはどの学校で、どんなバスケをしたいか。そういったことを考えるようになるだろうとは、おのれのことだからこそわかることだ。)大きすぎると持って帰るのも大変なので。お任せします。俺は応援してますね、隣で。(ここから合宿所へと持ち帰るのも、合宿所から実家へと持ち帰るのも、大きな荷物は人目を惹くことになるだろうから。この場限りの応援隊長を申し出れば、彼の隣からガラス越しの中身を覗き込むようにする視線は興味の色を宿していたか。彼の手元を見てみたり、その操作により動くアームを見てみたり、アームに触れはするものの結果として同じ場所、または少し異なる場所へと移動をするだけのぬいぐるみを見てみたり。緩慢に行き来していた視線が忙しなく動くとすれば、彼が筐体へ対し掴みかかった瞬間である。「まあまあ」と宥める様はそれでも愉しげであったから、彼が目的と定めたぬいぐるみがこの腕に収まることがなかったとしても、その表情に笑みを滲ませることとなるのは既定事項であるのだけれど。)結構難しいんですね、大きいからかな。バランスがなかなか……続けます?諦めて、違うのでも狙いますか?(彼が落ち着きを見せたのならば、首を傾げ尋ねるのは継続か撤退かの二択だろう。思い出作りとしてはしっかりと目的を果たしていて、彼がどのように普段を過ごしているのかを垣間見ることが出来た気もしているものだから、未練として残るとすれば何かしらの形として得ることが出来なかったという程度のもの。残す100円玉の数にもよるかもしれないが、継続をするというのであれば最後まで見届ける心算であり、撤退というのであればそれはそれでと異議を申し立てはしない心算だ。彼が筐体へ掴みかかっている姿を店員に見られていなかったかどうかだけは、少しばかり気になるところ。)
* 10/27(Fri) 02:08 * No.212

(盛大に空ぶるか、あるいは浮かんでは落ち、アームの端にぶつかっては転がり、けれど次の手でまた元の位置に戻るを繰り返す景品の行方よりも、大袈裟すぎる桜木の挙動の方がよほど見ごたえがあったかもしれない。あまりの白熱ぶりに何事かと見物に来る客も居たのだが、その風貌に恐れをなしてか皆遠巻きに見守るばかり。それは店員も同じであって、傍にある両替機の陰からはらはらしながら此方を覗き見ていたことに二人は気づいていなかったが。)ナゼダ……(彼に宥められれば一層惨めな気がして「チガウんだチューセー君、この機械反応がワリーんだ! オレが下手なんじゃねー!」と弁解をするも、こうも失敗続きでは天才も自信を失うというもの。けれども、)イヤ、諦めねー! オレは諦めない天才だからな! この黒い毛玉をチューセー君にやる!(諦めの悪い男というのは軍資金を貸してくれた先輩の代名詞であったが、そもそも湘北はそうした男達の集いである。つまり撤退の二文字は初めから選択肢になく、「諦めるか」などと言われれば逆効果。勢い込んで「ゼッテー取る!!」と叫んだならば再び臨戦態勢に。おまけに遠くのギャラリーから励ましすら飛んでくる始末。すると落ち着いた桜木が再び暴れだすのを恐れたか、気の弱そうな店員がおずおずと近づいてきて「あの…景品の位置、お直ししましょうか」と申し出たので、)ぬ?(状況がのみ込めないまま首を傾げていると、「今のままだと、えっと、どんな人でも取るのが難しい位置にあるので…」と桜木のプライドを刺激しないよう大分言葉を選びながらの返事がかえる。)そうなのか? ならこの天才が取れなくても仕方ねーな。(不調の言い訳を得て途端に機嫌が良くなった桜木に安堵した店員は、目当ての――と言ってもその山は全て同じぬいぐるみなのだが――黒猫を一体手に取ると、あと少し、例えば桜木が機械に掴みかかった勢いですら落ちそうな絶妙な位置に配置した。大サービスである。)おお、サンキューな!(そうして漱石一人分あったはずの100円玉、その最後の1枚を投入すれば、むしろ落ちないのが不思議なくらいのバランスを保っていたぬいぐるみが、アームが動き始めた振動でぽとりと落ちた。)うおー! やったぜ!!!(勝利の雄たけびはギャラリーの歓声を誘発したが、「ほら見ろ、チューセー君!」戦利品を差し出された隣の彼の反応はさて。)
* 10/27(Fri) 14:11 * No.213

(彼とぬいぐるみとの攻防を見守るのはなにも中世古だけではなく、自然と集まっていたゲーセンの客が遠巻きに見ていたり、店員と思わしき姿が二人の様子を眺めていたらしいということは、きっと後から知る話。当人たちはそうした現状を知らぬまま、「相性ってありますもんね……?」などと彼の苦手なぬいぐるみの置き位置や、そもそものぬいぐるみの形自体が掴みにくく感じられたのかもしれないと、結果が伴わずにいることに対する出来る限りのフォローを投げていたところだった。諦めると決めてしまえば一瞬で、続けるというのならば手持ちの軍資金が尽きるまでかその一歩手前までか。彼曰くの“黒い毛玉”の正しい名称すら知らないけれど、贈ってくれるという思い自体がそもそもの贈りものとなるのだと告げたところで、彼が納得してくれるかどうかはわからなかったから。)じゃあ、応援してます。精一杯。なので、取って俺にください。あの黒い毛玉。(可愛げがあるとは言えないだろうけれど、彼の厚意に胡座をかくことなく、せめて甘える姿勢を見せることが出来るなら。結果として、そんな彼に齎された店員からの救いの手には内心拍手を向けたりもしたのだけれど。気が付けば無関係な周囲を味方に付けたこの場に於いては、きっとホームにも等しい雰囲気となり得たはずだ。)――あ、(流石の店員の配置というべきか、もっともそれを誘発したのは彼の粘り勝ちによるものと捉えるべきだろうから、結局は彼の実力によるとするべきか。ぬいぐるみが落ちるまでを見届けたのなら、彼が取り出しこちらへ差し出してくれるさなか、自然と出来ていたギャラリーの歓声に思わず周囲を見回してみたり。けれどすぐに彼へと視線を戻し、手元のぬいぐるみを両手で受け取ったのなら、)ありがとうございます、桜木さん。(緩く浮かべた微笑みと、両腕でぬいぐるみを抱えつつ頭を数秒の間下げる様と。再び視線を上げるまでの間に、ともすればギャラリーよりまた異なる反応がなされるかもしれないけれど、きっと彼ならば上手く収めるに違いない。試合中のみならずこうした日常的な光景においてまで、いつだって人の目を惹く人であるのだということを、あらためて実感したような。――彼の親友たちが普段から感じているかもしれないことを、ようやく身を以て知ることが出来た心地である。)
* 10/27(Fri) 23:12 * No.216

おうよ!(諭して諦めさせる道を選ばず、彼が励ましと期待を素直に伝えてくれたことが嬉しかった。そんな想いに応えるべく闘志を漲らせた男にクレーンゲームの才能はなかったけれど、周りを巻き込む才能は人一倍。気づかぬうちに全てお膳立てされていたとも知らず、10回目の挑戦にしてやっと目的の品を手に入れることができたなら、周囲の歓声も相まって最高の笑顔とともに黒い毛玉を贈ろうか。)へへ。また一つ天才の称号が増えちまったぜ。(とは真実を知らぬからこそ言えること。歓声の内訳も9割がその場のノリ、残りが人の良い祝福といったところだが知らぬが仏。良い所を見せてやったと浮かれたまま「はっはっはっ! どーもどーも!」とギャラリーに手を振れば、やがて一つのイベントが終幕したかの如くギャラリーも消え去り、店員も控えめな会釈とともに店の奥に引っ込んで、残ったのは初めから流れているBGMと時折混ざる店内放送のみとなった。そして「そういえば」と思い出したように賑やかな音の隙間に声をさし込み、)そいつ、持ってると願いが叶う猫なんだとよ。(ぬいぐるみの尻尾につけられたタグを指さした。其処にその猫が出てくる作品名と、ポップと同じような煽り文句が書いてある。)ま、ホントかどーかわかんねーけど、もしそんなパワーがあるならスゲーだろ? だからチューセー君にあげたくってよ。(勿論最初からそれを目当てにこの機械を選んだわけではないのだが、そのぬいぐるみを取ると決めた理由については伝えたとおりだ。心の内にこっそり秘めておくのが苦手な男はどうだ凄い代物だろうと言わんばかりに煌めいた瞳に彼を映し、)な、だからチューセー君は行きたい高校に行けるぜ。ちなみに前にやった天才のスイセン文と合わせるとご利益はなんと倍! 湘北を選ぶと100パーセント願いが叶うってスンポーだ!(にかっと笑えば、つまりはやっぱり湘北に来いという話。彼の意見を尊重したい気持ちと、しかし揺れ動く先に湘北があるのならそちらに引き寄せたい気持ちがあって。単に待っているだけは性に合わないから自分にできることなら何でもしておきたかった。ゆえにその後もよく行くファーストフード店で学生らしい昼食をとったり、適当に街をぶらついてみたり、公園で鳩を蹴散らしてみたり、桜木花道の日常を彼に分け与えるよう懸命に動き続けるのだろう。何と言っても「努力の天才」ですから。)
* 10/28(Sat) 23:07 * No.219

(周囲を巻き込むことに秀でているということは、普段の様子からも知り得ていることであり。同時に、彼が過去に出場した試合の記録を目にするだけでも理解が出来ることでもある。何より人目を惹く赤い色の存在が大きいだろうことは勿論だけれど、ひとたび視界に収めてしまえば、目を離すことが出来ないような。贈られた黒い毛玉はありがたく受け取って――きっとこの光景は、忘れない。)これからはクレーンゲームの天才ですね。(受け取った毛玉をおのれの目線に掲げてみては、腕に抱え込んで彼の方へと向き直らせてみたり。ギャラリーと彼との遣り取りを見届けて、周囲の解散までをも特等席で楽しもう。その頃には抱えた戦利品も腕に馴染んでいるにちがいない。)……え、そうなんですか?(示されることで初めてタグを確認すれば、記された煽り文句に「ほんとだ」と感嘆を。)ただでさえご利益ありそうなのに、そんな力もあるってなったら凄いと思います。これから毎日お願いしようかな、ちゃんと叶うまで。(あらためてぬいぐるみの双眸を覗き込むように見遣ったのなら、かける願いを思案するのは自然の流れ。とはいえ然程悩むまでもなく至る願いがあるとするのなら、彼の言葉の通りとなるだろう。行きたい高校への進学。未だに検討していることが幾らかもある中で、けれど背を押す要素があることもまた確か。そのうちの一つにぬいぐるみの存在と、彼からの推薦文とが含まれるのは言わずもがななことだから、)……俺だけじゃなくて、桜木さんの願いも叶うかも。(たくさん重なるご利益の果て、叶う願いがあるのならば一つと言わず二つでも。おのれだけでなく彼の願いも叶えばいいと思うのは、それこそ強欲が過ぎるだろうか。残る合宿期間の間に懸けた願いが201号室のみならず、他の部屋まで届けば良いと思う一方で――室内だけに留めたいと思う気持ちがあったとの開示の先は、当のぬいぐるみに対してのみに為されたかもしれない。彼の日常に触れる度に確かに積もるのは、何も思い出だけではないのだから。)
* 11/8(Wed) 01:09 * No.260


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azulbox ver1.00 ( SALA de CGI ) / Alioth