Event
return
【2】11/6(金):正午 陵南高校
(もとより眠る場所は選ばない性質ではあったが、合宿6日目ともなれば通学含めて宿泊施設での生活にもようやく慣れてきた。朝練は気まぐれ、放課後の練習ですら道中寄り道が多いゆえに相変わらず遅刻は減っていないという為体。後輩はもちろんルームメイトにも示しがつかない行動が多いものの、それでも体験入学の案内をほっぽり出すような不誠実はせず、此日は定刻通りに起床して午前中には体育館を始めきちんと学校案内を済ませたのだった。)――…とまあ、校舎はこんな感じ。広いから一度に全部は覚えらんねーと思うけど、参考までにな。(おのれも入学当初は校内の広さに驚いたものだと笑いながら話していると、丁度昼休みを告げるチャイムが校内に鳴り響く。わらわらと教室より出てくる生徒の波に従って歩みを進めるのは、もちろん校内で唯一の購買がある場所である。お互い弁当を持参していないことは知っているゆえに。)昼飯は購買で買うか、弁当持ってくるかの二択。購買は週三で近所のパン屋がパンを売りに来るんだが、競争率が激しくってな。いいのが残ってるといーけど。(さいわいにも今日はパン屋が売りに来る日であった。しかしそんなふうに人気を示唆しつつも、足取りも口調も実にのんきなものだっただろう。しかして購買についたなら、さっそく出張販売の一角へと向かうつもりでいるけれど。)あ。パンよりごはん派だった?(と、今更ながらな問いを投げた。彼の返答によっては踵を返して、購買のおにぎりコーナーへ向かうつもりでいる。)
* 9/19(Tue) 22:17 * No.98
…
(この6日でわかったことは、彼は自分と同じかそれ以上に自由な男だということだ。つまりはストッパー不在。窓辺のベッドで朝日に起こされてもなお、少し離れたところに横たわる大きなシルエットを認めたならばまあいいか、という気持ちになるので2号棟203号室の朝は遅い。比較的合宿所から近い中学に所属するくせ朝練の参加率はいまいちで、チームメイトからどつかれることもしばしばだ。一方彼とは異なり放課後の練習に遅刻するようなことはないのだが、単に学校から合宿所まで連行されるためマイペースを発揮する余地がないというだけの話。)……リョーナンって広いんだね。(しかし二人ともやる時はやる子。特に今日という日を待ち望んでいた乙坂は、「今度アキラの学校に行けるんでしょう」「楽しみだね」を繰り返し、たびたびリマンダーの役目を果たしていたこともあって彼の頭から予定がすっぽ抜ける心配は要らなかった。もし彼が寝坊するようなら今回ばかりはきちんと起こしてやろうと誓ってすらいた。そんなわけで珍しく他と同じスケジュールをこなしながら、彼は此方の旺盛な好奇心に応えてくれたことだろう。そうしてあっという間に正午を迎え、お昼のチャイムで空腹に気づく。)そっか。とっても美味しいパン屋さんなんだね。(当然のように彼に合わせて昼食を決めたものの、歩みに焦りが乗ることはない。行ってみて無ければ無いで代わりを探せばいいのだから。スーパーに何があるかわからない、何もなかったなんてことは日常茶飯事だったので。のんびりの道中、)アキラのおすすめのパンはある? おれ、ヤキソバパンっていうのがおいしいって聞いたことあるよ。(それは乙坂の知識で言うとパンにパスタを挟むようなものなのだが、日本にはそうした炭水化物を掛け算する文化があるとチームメイトが言っていた。「おれの学校でも人気なんだって」と添えながら。人気すぎるらしく、まだお目にかかったこともないが。)どっちも好きだよ。おいしい方が好き。(ゆえにそんなに美味しいパンがあるのなら、今だけは断然パン派、と答えておこう。)
* 9/20(Wed) 21:25 * No.101
…
オレも入学当初は迷ったよ。(私立ゆえか、或いは立地ゆえか。監督の熱心な勧誘と海から近い環境に惹かれて推薦の話を受けたはいいが、訪れた当初は規模の大きさに驚いたものだと軽く笑う。今は流石に迷うことはないものの最初は体育館へ行くまでよく道を間違えていたことを思い出しては「よく先生に怒られたな」としみじみ呟きもする。もっとも遅刻は今にはじまったことではないゆえ、怒られているのはしょっちゅうなのだが。)まあ売店の棚に並んでるもんと比べたら普通にうまいと思うよ。(数日前に工場で作られたものと、今日作ったばかりのものなら、よっぽどハズレでない限り圧倒的に後者の方が味はいいだろう。彼がコンビニ等でパンを買ったことがあるかどうかはわからぬものの、されど口で説明するよりも食べてもらった方が恐らく話は早いだろうと歩みを進めて。)焼きそばパンは外れないからな。あとはコロッケパンとか、甘いもんだとチョココロネとか。色々あるぜ。(焼きそばパンの人気へは同意するよう頷きつつ、おすすめの話にはよく買うパンをふたつほど挙げてみせたが、残っているかどうかは運次第といったところ。焼きそばパンに並んでコロッケパンも割と人気ゆえ、さて今日は残っているかどうか。彼の口からパンも問題ない旨を聞けば「じゃあ問題ねーな」とそのまま出張販売の一角へと足を進めていこう。)おお。今日はまだ焼きそばパン残ってるな。オトサカ君、好きなの選んでいいよ。(ぼちぼち人は居たものの、おのれが近寄った途端に不思議と人垣が退くのだから面白い。そんな光景にも慣れたようにのんきに笑いつつ、まだ人気所のパンが残っているバットの中へと眼差しを落としては、彼の選択を見守るとしよう。)
* 9/21(Thu) 22:53 * No.104
…
コロッケパンにチョココロネ? 日本人って何でもパンといっしょにしちゃうんだね。コロッケもチョコもパンもおいしいから、一度に食べたいのかな?(教えてもらった人気の二品もまた馴染みのない響きだったが、コロッケやチョコレートが入ったパンなのだろうとは察しがついた。だがチョコレートはまだしも、コロッケとパンの取り合わせはわかるようなわからないような。なかなか不思議で首を傾げた。「それとも時間がないから?」そんな帰着は勤勉で忙しい日本人の特徴を思い浮かべてのち。まあ、彼のような例外も居るわけだが。)──わあ!(そうして彼が割った人波の間をためらいなく行きヤキソバパンと出会ったならば、悩むことなく噂のそれを手に取った。パンの間に挟まれた焼きそばはやっぱり少し異色に見えたけれど、これが美味しいと言うなら美味しいのだろう。幸い好き嫌いはほとんどなかった。)本当にたくさんパンがあるんだね。……あ、これかわいいよ。ソフトクリームみたいだ。(それから手に取ったのはチョココロネ。ポップに書かれた名前を見て「これがチョコのやつ?」と彼を仰ぎつつ、)ねえ、すごいよアキラ。コロッケパンもちゃんとあった!(今日は運がいいらしい。次いで人気商品三品目を見つけたならば当然のように腕の中に抱え込み、笑顔で戦果の報告を。しかしそれが最後の一つと知れば、)えっと、アキラはどれにする? コロッケパン……は1こしかないから、はんぶんこする…?(と彼に譲る姿勢を見せた。チョココロネはまだいくつか残っていたが、コロッケパンはこれきりだ。おすすめと言うくらいだから彼も好むパンなのだろうと思い至ってのことだが、まるまる譲ると提案できないあたり食い意地の張った子供である。)
* 9/22(Fri) 10:21 * No.106
…
(海外のパン事情など当然知っている筈もなく、疑問を聞いて初めてアッチにはないのかという感慨が浮かび上がる。ただ『なんでもパンと一緒にしちゃう』理由が時間がないからという斜め上の解釈にはなんだか妙に納得してしまい、思わず「ははは」と笑声を転がしただろう。──しかしてモーセよろしく人垣を割った先、並ぶパンを見遣っては今日は運がよかったなと思ったものだ。歓声を聞けば微笑ましがるようにそっと眦をさげて、)ああ、そーだよ。気になんなら食べてみるか?(彼の手に収まった菓子パンを見遣れば小さく頷き、興味のほどを問うてみる。おのれもまたバットの中を覗き込んでは今日はなにを買おうかと考えていた矢先、飛んできた疑問に眼差しを彼へと向けた。)ん? オレは食おうと思えばいつでも買えるし、今日はオトサカ君に譲るよ。今日はコロッケパンよりもメロンパンの気分だしな。(気遣いには感謝しつつも、ここは先輩として後輩に譲るつもり。ご覧の通りムラの多い気分屋ゆえ、今日の気分に従ってメロンパンとソーセージロールをひょいと選び取っては会計を済ませてしまうつもりでいる。しかして彼がパンを選んで会計を済ませる合間に購買でパック牛乳をふたつ購入したならば、そのうちのひとつを彼に渡して、にこりと笑った。)このあと授業も一緒に受けるみてーだし、教室で食おうぜ。(屋上や体育館脇といった穴場で広げるのもいいけれど、折角一日体験するのならばクラスの雰囲気を味わっておくのもいいだろう。了承を得られれば教室に向かって進んでいくつもりで、道中「オトサカ君、英語は得意?」と昼食後に控えている授業の得て不得手も確認しておこうと。)
* 9/23(Sat) 21:43 * No.110
…
いいの?(半分どころかまるまる譲ると言われればちょっぴり悪いような気もしたけれど、コロッケパンよりメロンパンと言われれば今日の彼の気分に感謝した。「ならよかった。でも、食べたくなったらあげるからね」と下げた眉もすっかり元通り。結局手に取った三つのパンを全て抱え、彼の後を追うように会計を済ませると、)わあ、ありがとう。(遠慮知らずはスマートなサプライズを笑顔と引き換えてのち、)教室? うん。行こう。(行先を決めてもらえば快く頷いた。何処で食べるかよりも誰と食べるかの方が重要だし、午後には授業見学があると聞いていたので遅かれ早かれ向かう先だ。ならば今から行っておくのもいいだろうと、案内人の後を良い子の足取りでついて行く。途中、此方をちらちらと見ている生徒が多いのに気付いたけれど、単に異なる制服をまとった自分の存在が気になるのだろうな、くらいに思っていた。)英語はまあまあ、かな。日常会話くらいならわかるけど、向こうではスペイン語を話していたから。(そう返したものの、日本の中学の英語レベルを考えれば得意な方と言うべきだったかと思い至る。しかし二人の会話に厳密さが求められることはないので敢えて訂正はせず、代わりに「アキラは?」と問い返して。)高校の授業ってどんな風かキョーミがあるな。あと、勉強中のアキラもね。……うーん、こういうのなんて言うんだっけ。授業参観…?
* 9/23(Sat) 22:52 * No.111
…
(彼も無事に昼食の購入を済ませ、場所の承諾も得られたならば足は迷いなく2年の教室へ。ちらちらとこちらへ眼を向けてくる生徒へも愛想よく緩やかに手を振る中、そこに見知ったチームメイトの顔を見つけては「福田、一緒に食うか?」と声を掛けもしたけれどプイッとそっぽを向かれてしまったのだった。閑話休題。)はは。スペイン語のほうがわからねーや。けど三ヶ国語も話せるなんてすげーな、そういうのなんていうんだっけ……トリリンガル?(はて、どう呼ぶのだったかと首を小さく傾ける。彼の片親が日本人といっていたから日本語に関しては幼少の折より触れる機会があったのかもしれないが、それはさておきその若さで多数の言語を話せるのは純粋に凄いことだと思うゆえ。返ってきた言葉にはゆるく笑って、)まあまあかな。授業は寝ちまうことが多くって、正直あんま頭に入らねーんだ。(お陰でチームメイトにノートを見せてもらったり教えを乞うたりすることも多いものの、顔貌を彩るゆるい笑みが物語るように後頭部を掻きながら紡ぐ言葉に反省の色はない。そうこうしている間に教室に着いたなら廊下側の一番後ろの自分の席へ案内し、おのれは近場の空席の椅子を引っ張って彼の真正面を陣取って。)どっちかというと職業体験の方が近いかもな。(授業参観もそこまで的を外してはいないものの、訂正するならばこんなところだろう。今日は彼が隣にいることもあるゆえ恐らく寝ずには済むだろうけれど、さてどうなることやら。中学生を連れていることもあり、教室でも廊下と変わらず生徒の視線が集中しているものの、どこ吹く風とメロンパンを一口齧った。)
* 9/25(Mon) 21:38 * No.116
…
あ、フクサン!(初めてのこと尽くしの陵南高校において、見知った人物に思わず喜色がにじむ。そして声をかける彼に同意するよう頷いたのだが、気が乗らなかったのだろう、ナンパは不発に終わってしまった。だからと言って気を悪くするでもないのがこの二人。「フクサンってシャイなんだね」なんて話しながら。──ちなみに以前誰かがそう呼んでいるのを聞いて「フクチャン」と呼んでみたところ、「後輩だからさん付けしろ」と言われたため、きちんと「フクサン」と呼んでいる。)うん、トリリンガル。でも父さんはもっとだよ。色々な国で仕事をしていたからね。それで英語は特に必要だって言うからおれも勉強したんだ。(キューバで話されるスペイン語は母の母語でもあり、日本語は父の母語。英語は世界の共通語として。キューバで暮らしていた頃から父は忙しく海外を飛び回っていたのだと加えれば、なんとなく乙坂の家庭事情は伝わるだろうか。彼に褒められればその事実を嬉しく思って笑みを浮かべたものの、頑張ったことを得意げに自慢することもない。ただ事実の紹介といった風だった。一方で彼の学習状況を知れば驚き、)そうなの? いつもそんなに疲れているの? それとも眠れていない?(瞳には心配の色すら浮かべ、単にサボりたいだとか勉強が苦痛だとか、そういった心情を当然のように選択肢から外して問うた。それは彼の朝が遅いことを知っているからだし、学びに対して消極的である生徒を心底不思議に思っているからでもあった。)おれは勉強するの好きだから、授業はいつもわくわくするよ。言葉がわかれば国の文化がわかるでしょう? 歌だって歌詞がわかるともっと楽しいし。(そう続けた乙坂はキューバにおいて特別志高い少年というわけではないのだが、娯楽も選択肢も多い国では少し異質に映ったかもしれない。とはいえ授業を聞いていない事を咎めるわけではなく、「じゃあ今夜はホットミルクを作ってあげる」と自分なりの解決法で締め括り、)ああ、おれも授業を受けるんだものね。アキラの観察ばっかりしていたらだめだった。(「でも寝たら起こしてあげるからね」と添えたのも親切心。学びは楽しい。それは学問についてのみならず、身近な人を知ることもそう。だがそればかりではダメだと思い出せば苦笑しつつ、此方は噂のヤキソバパンを一口、「あ、おいしい」と二口、三口。)それにしても、アキラって人気者なんだね。
* 9/26(Tue) 11:16 * No.118
…
(くだんのチームメイトをシャイと称するとは中々大物だなあと内心思いつつ「いつもあんな感じだよ」と軽く笑って受け流した。彼の語学事情に関しても感心したように相槌を打ちつつ、自分にはきっと無理だと思うからこそのんきな笑みも浮かぶ。それはこちらへ飛び火したところで変わることなく、いっそ心配まで向けられてしまえば「あはは」と笑声を転がして。)なんでだろうな。気づいたら寝ちまってるんだよ。(苦痛だとか苦手とか、そういう感情ではないと思う。敢えて挙げるならば退屈、それが一番しっくりくるような気がしている。学びに関して消極的なわけではないが、やはり気まぐれであり、気分が乗らねば中々行動的にならないのは事実。彼の学びへの姿勢は言葉を交わしていてひしひしと伝わってきたゆえ「それを飲めばオレもやる気になるかな」とにこやかに応えるのだった。)えっ。オレを観察する気でいたの?(きょとんとして瞬きをつく。なるほど、それで授業参観と称したのかと今更ながらの納得が頭を過りつつ、焼きそばパンが彼のお気に召したとわかればそっと眦をやわく溶かし、パンの二口目を口にした。)ん? ああ、背が高くて目立つからな。今日はオトサカ君も一緒だし。(人気者については否定も肯定もせず、衆目を集めた理由に彼の名も挙げてはゆるく口の端をあげた。)放課後はバスケ部も見学していくんだろ? バッシュ持ってきてるか。(そんな話題を呈したのは、今日はバスケ部の見学客が多くなるだろうと思ったがゆえに。理由は先刻述べたとおりだ。)
* 9/28(Thu) 00:29 * No.124
…
え? うん。そうだよ。アキラが学校でどんな風なのか見たかったんだ。(もちろん陵南高校そのものや高校の授業風景を知るという目的を忘れてはいないが、合宿所で見る彼との違いを楽しみにしていた気持ちがあったから。「でも、アキラはどこにいても変わらないね」と続けて笑いながら、ヤキソバがこぼれないよう口を大きく開けてもう一口。)それもあるだろうけど、アキラが手をふると女の子たちがとてもうれしそうだったよ。(思い出すのは先刻の風景。彼が手を振りにこやかに廊下を通り過ぎるたび、甘いさざなみが起こった。「アキラはステキだものね」と続けた言葉にプレイボーイと揶揄する意図は微塵もなく、むしろ彼のルームメイトとして誇らしいような、そんな口ぶりで微笑んで。)うん。もちろん。(そうして青のりを唇にくっつけつつもなんとかヤキソバパンを食べ終えると、チョココロネを取り出しながら頷いた。バスケ部見学と言えば今日一番のお楽しみと言っても過言ではない。赤い星がトレードマークのお気に入りのバッシュなら、昨夜のうちにバッグに詰め込んだのだと胸を張って。)練習着もちゃんとあるよ。おれ楽しみにしてたんだ。(彼をはじめとして陵南高校の選手5名は合宿所でもともに練習ができるけれど、陵南の部員はとても多いと聞いたので。「どんな選手がいるのかな。おれも練習参加できるかな」と問うかたわらチョココロネの先端を齧りつつ、)アキラはリョーナン高校、すき?(ふと思い至ったように首を傾げた。)
* 9/28(Thu) 10:39 * No.125
…
(どこに居ても変わらないとの言葉をもらえば「そーか?」と疑問を呈する口調は軽かった。やはり笑顔は絶やさぬままに、しかして会話の流れが先刻の日常の光景へと流れていけば意図を察して口許を綻ばせる。)そういうのは湘北の流川のほうがスゲーぞ。親衛隊までいるくらいだからな。(湘北との試合のたび必ずといっていいほど応援席を賑わせている女子軍団の存在を想起しては、興味の矛先を変えてしまおうと因縁深い色男の名前を挙げてみる。素敵と言われることも応援をもらうこともどちらも有り難いとは思うけれど、天狗になることなくさらりと受け流すのがこの男だった。)おお、やる気だな。となると、放課後になったら更衣室も教えなくっちゃか。(体育館は教えたくせ、そういえば更衣室を教えていなかったことに気付いては、今更気付いたようにはたと瞬きをつきつつ。合間に牛乳を挟んでからおのれも二つ目のパンに取り掛かっていた最中、問い掛けが聞こえたならば「参加はできるんじゃねーかな」とさらりと言葉を返した。スカウトに力を入れている田岡監督のことだ、折角将来有望な選手が学校見学に来ているこのチャンスを逃す筈がないだろうことは近くで見てきたがゆえに想像がつくことであるがゆえに。しかして新たな話題には、少しばかり考えるような瞑想を挟んだのち、)好きだよ。……練習はキツイところもあるけど、先生も部員もみんないい奴らでさ。それに、なにより海が近い。(そっと押し出した言葉は、心から紡いだ音だった。最後に加えた言葉だけは他と比べて冗談めかした音になったが、男のサボり癖を思えばこちらこそが本音であるのやもしれなかった。)オトサカ君も、好きになれそうな学校が見つかるといいな。(此処を好きになってもらえたらいいと思わないこともない。けれどその反面、彼と敵として当たる未来を期待している自分もいる。相反した想いながらどちらの心にも嘘はなく、にこりと笑って告げた直後、昼休みの終わりを告げる鐘が鳴るだろう。)……っと。その前に授業をがんばらねーとだな。(放課後まであと少し。斯くて最後のひとくちを口に放っては、彼の分の椅子と机の確保をするとしよう。今日欠席の生徒がいるならばその生徒の椅子を拝借しておのれの隣につける所存。英語の教科書は一緒に見れば恐らく問題は無いだろう。あくびを零すことはあるかもしれないが、眠りに落ちることは恐らくなかった筈だ。)
* 9/30(Sat) 00:51 * No.128
…
うん。いつもとちがう人たちと練習できるのは楽しみ。それに、今日はみんなリョーナンの選手にもどるでしょう?(合宿に選抜されたのは彼一人ではないとはいえ、他校の選手も多く集う合宿所では学校ごとのチームカラーはなかなか見えにくい。その点本日は日頃から慣れ親しんだ彼のホームだ。ゆえに見学も、叶うならば練習に参加もしてみたいのだと頷いて、色よい返事をもらえば「やった」と喜び、勢いで噛みついたチョココロネの先から中身が飛び出てちょっと慌てた。それからふと思いついて問うたのは、学校見学らしく生徒の――もちろん彼の、というところにも大きな意味はあるけれど――生の声が聞いてみたくて。)そっか。…ふふ、アキラって本当に海が好きなんだね。(昼休みのざわめきに紛れてしまいそうな声量で、そっと紡がれた本音を嬉しく思って微笑んだ。はっきりとした肯定とその理由と。照れ隠しなのか本音なのかよくわからない冗談めかした言葉と。続いたやさしい希望と、ぜんぶを。)はは、それはだいじょうぶ。おれはきっと、ぜんぶ好きになっちゃうから。(彼の願いは叶うだろう。ただ、その中からひとつを選ぶのはとても迷うかもしれない。レストランのメニューよりも少ない選択肢だとしても。笑顔と笑声の後を追うように昼食の終わりがやって来たならば、)そうだね。がんばってアキラが寝ないように見はらなきゃ!(なんて声高らかに。残ったコロッケパンも慌てることなく大きな口で約三口。きちんと「ごちそうさまでした」で締めくくれば、その間彼が用意してくれた席に平行移動でお引越し。──その後の英語の授業は概ね宣言通り真面目に受けた。ただし、ネイティブとは程遠い生徒の音読に彼と揃いのあくびをかみ殺してみたり、例文を作ろうのコーナーではノートを半分借りて『What do you want to eat for dinner weekend?』と綴ってみたりと、そこは隣人に似て割合自由に。)
* 10/1(Sun) 22:33 * No.129
azulbox ver1.00 ( SALA de CGI ) / Alioth